第四章
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「少なくとも俺は呼んでないぞ」
「俺もだ」
喜多も言う。
「それはな」
「そうだよな」
「じゃあ何だよ、美人さんだよな」
「白い和服で雪みたいに白い肌をしてな、髪は灰色で長いぞ」
「白い和服で白い肌?」
そのことを聞いてだ、喜多は。
すぐに顔を顰めさせてだ、こう兄に言った。
「そのままだろ」
「雪女か」
「童話に出て来る姿のままじゃないか」
「じゃあ中に入れたらか」
「俺達かき氷になるぞ」
「そうなるよな」
まさにだ、小泉八雲の小説のままにだ。
「やっぱりな」
「ああ、だから入れるな」
「それがいいな」
「もう入ってますよ」
二人が話をしているとだ、喜一郎が言ったままの美人がだった、二人の横に来ていた。確かに白い着物を着ていて肌は雪の様に白い。髪は長い灰色で切れ長の長い睫毛を持つ黒い瞳にだ、細面で薄い整った唇を持っている。中々上品な感じの美貌だ。
その美人がだ、こう二人に言った。
「実は扉はすり抜けられまして」
「おい、入れるとは言ってないぞ」
「こっちがいいって言ってから入れよ」
「すいません」
女は文句を言う二人に深々と頭を下げて謝罪した。
「ついついお話を聞いて言いたくなりまして」
「それでか」
「っていうかあんたやっぱり妖怪か」
「雪女か」
「そうなんだな」
「はい、私は雪女です」
実際にという返事だった。
「ご推察の通り」
「それで俺達を殺すのか?」
「凍死させて」
「そうするのか」
「とんでもない奴だな」
「いえ、そうしたことはしません」
雪女は二人にこうも答えた。
「私は人を殺したりしません」
「ああ、じゃあいいけれどな」
「それだったら別にな」
「俺達もいいけれどな」
「殺さないのなら」
「はい、ただお酒が大好きで」
雪女は二人にあらためて言った。
「コンビニに行ったのですが」
「雪女がコンビニ行くのかよ」
「それはまた変な話だな」
「世の中変わったな」
「そうだな」
「人間のふりをしたらいけます」
コンビニにもだ。
「ですが日本酒が切れていまして」
「あんた日本酒派か」
「俺達と一緒だな」
「で、俺達が日本酒飲んでいてか」
「そのことを察してか」
「飲ませて頂きたく、おつまみはありますし」
それにというのだった。
「お金も払います」
「どうする、兄貴」
雪女の話をここまで聞いてだ、喜多は兄に尋ねた。
「それで」
「一緒に飲むかってか」
「俺達と」
「三人で」
「駄目でしょうか」
あらためてだ、雪女は二人に言ってきた。
「そうして」
「どうする?」
今度は兄が弟に相談した。
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