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時には派手に
第二章

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「今日は不思議とね」
「調子がいい」
「怖くないですか」
「得意な役のせいかな」
 しかも歌ってきた役の中でもとりわけだ。
「気分がいいよ」
「それならですね」
「今日は気分よく歌えますか」
「いけますか」
「うん、こんな日は珍しいよ」
 舞台が怖いコレッリではあるがだ。
「思いきり歌うか、特にね」
「見よ、恐ろしい炎ですね」
「あの時ですね」
 第三幕で歌うアリアだ、マンリーコはおろかこの作品での一番の聴かせどころだ。非常に劇的な歌である。
「歌いますか」
「いつも以上に」
「喉の調子もいいよ」
 コレッリはこのことも言った。
「だから余計にね」
「いい歌をですね」
「歌えますか」
「そうしてくるよ」
 こう言ってだ、コレッリは舞台に入った。そして。
 一幕、二幕と歌い彼は楽屋で周りに言えた。
「本当に絶好調だよ」
「いつも以上にですね」
「調子がいい」
「喉も音程も」
「どれもですね」
「こんなに舞台にいてやれると思うのはね」
 それこそというのだ。
「滅多にないよ、これならね」
「見よ、恐ろしい炎もですね」
「万全の調子でいけますね」
「若しかしたら」
 コレッリはその整った顔を真剣なものにさせて言った。
「これまでにないものになるかな」
「見よ、恐ろしい炎が」
「コレッリさんにとっても」
「いけるかもね、ヴェルディがいたら」
 作曲した当人がというのだ。
「何ていうかな」
「そこまで、ですか」
「凄い歌が歌えそうですか」
「これは」
「そうかもね、じゃあね」
 それならとだ、コレッリは時間になってだった。舞台に戻った。そして第三幕の舞台を進めていき遂にだった。
 見よ、恐ろしい炎を歌う場面になった。そこで舞台は一変した。
 コレッリが歌うとだ、誰もが聴き惚れた。
「これは」
「今日のコレッリはいつも以上に凄いぞ」
「かなり調子がいい」
「高音がかなり出ている」
 所謂ハイCがというのだ、テノールが注目されるこの音程もというのだ。
「全体的にも」
「こんなに調子がいいコレッリも珍しいわ」
「ここがこのオペラ最大の聴かせどころだが」
 まさにだ、多くの観客はこのあまりも劇的なアリアを聴きに来ているのだ。他にも名曲が多い作品ではあるが。
「今日は格別だ」
「コレッリはこの役を当たり役にしているが」
「今日はまた違う」
「別格よ」
「いいアリアを聴けた」
「こんなに調子のいいコレッリははじめてだ」
 まさに絶唱だった、コレッリは完全にマンリーコになりそのうえでアリアを歌った。そして歌いきった後でだ。
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