第四章
[8]前話
「火事で」
「そうなりましたね、確かに」
「はい、恐ろしい火事でしたが」
それでもというのだ。
「黒死病を消し」
「腐り果てていく街をですね」
「浄化しました」
文字通りだ、そうしてくれたというのだ。
「火で」
「そうなったのですね」
「はい」
まさにという返事だった。
「街はあの火によってです」
「浄化されてですね」
「黒死病がなくなりました」
「そうなりましたか」
「あのままではです」
若し黒死病がなければとだ、キャロルは言うのだった。
「街は腐りそして」
「そのうえで、ですね」
「滅んでいました」
腐り果ててというのだ。
「黒死病により」
「我々ではどうしようもなかったですね」
「最早です」
そうした状況だった、ロンドンの街は黒死病に覆われ最早誰がどうしても手がつけられない状況に陥っていた。
「ロンドンにあの医師が来ても」
「ノートルダムという」
「それでもでした」
彼がその独自のやり方を行ってもというのだ。
「どうしようもなかったでしょう、しかし」
「それでもですね」
「はい、火事がです」
「ロンドンを救いましたね」
「そうなりました、では」
「はい、焼け落ちた街をですね」
「復興させていきましょう」
これからはというのだ。
「腐り果てて滅ぶところでしたが」
「あらためてですね」
「生き返らせていきましょう」
「そうですね、それでは」
ポストリッジもキャロルの言葉に頷いた、そしてだった。
二人はロンドンの中に入っていった、そこはもう腐っているものは消え去っていた。二人はその中に再び戻った。
十七世紀のロンドンは黒死病、即ちペストにより大変な状況に陥っていた。それはもうどうにもならないまでだった。
だが大火災により黒死病は収まりその後街は木造から石造の建物が建てられる様になり一変していった。未曾有の大火災であったがその火災がロンドンとそこにいる者達を救った、皮肉なことであるが人の手ではどうにもならない状況が災害により救われることもある、これもまた人の世ではあることだということであろうか。
死にゆく街 完
2016・4・19
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