第二章
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「落ち着いてあたれ、いいな」
「わかりました」
「それでは」
兵達も応える、そしてだった。
新山が率いる兵達は陣形を守りそのうえで戦った、夜の闇を利用して来る敵を冷静に撃っていった。そして。
夜が明けるまでその場に留まった、朝日が昇ると。
多くの兵達が陣地とその周りに倒れていた、日本の兵達も倒れていたが。
倒れている兵は民国の兵達の方が多かった、その状況を見てだった。新山は言った。
「陣地も崩れなかったしな」
「はい、何とかですね」
「守りきりましたね」
「死んだ者もいますが」
「それでもですね」
「我々は勝った」
新山はこのことを確信して言った。
「生き残ることが出来た、それではだ」
「はい、人員の点検ですね」
「そして武器の」
「これからはじめる」
こう言ってだ、新山は実際に率いている部隊の人員と武器の点検を行った。損害はあったがそれでも彼が思ったよりは少なかった。
そのことに満足して兵達に朝食を食わせようとした、だが。
その彼のところにだ、池永の部下の一人である士官学校を出たばかりの将校が来た。
彼が新山にだ、こう言ったのだった。
「大尉殿、宜しいでしょうか」
「何かあったか」
「はい、すぐに我々の部隊に来て頂きたいのですが」
「そちらにか」
「お願い出来るでしょうか」
「危急の要件だな」
新山はすぐに問い返した。
「そうだな」
「はい、戦闘は終わりましたが」
「わかった、ではすぐに行こう」
新山は彼よりも若いその将校に対して頷いた、そしてだった。
彼に案内されてその部隊のところまで来た、すると。
池永がいた、だが彼は。
腹、そして両方の腿を撃たれ蹲っていた、蹲っているその場所は血溜りになっている。そのうえでだ。
池永は新山を見て来た、もうその顔は蒼白になっていた。新山はその全てを見て事情を察した。
そしてだ、こう池永に問うた。
「俺にか」
「貴様ならばと思ってな」
「だからか」
「頼めるか」
その死相を浮かべさせている顔で言うのだった。
「ここはな」
「そうか」
「俺はもう駄目だ、それならばだ」
「生き恥を晒さずにか」
「腹を切る」
帝国軍人、それも将校として相応しくというのだ。
「その時にか」
「わかった、だが」
「それでもか」
「貴様のことはわかった」
新山は苦々しい顔でだ、己の前に蹲っている池永に言葉を返した。蹲っているがそれは正座の姿勢になっていた。
「だが」
「無理か」
「俺に貴様をか」
「貴様ならばと思ってだ」
「同期、そしてだな」
「これまでの付き合いからな」
「それはわかる」
またこう言った新山だった。
「だが」
「そうか」
池永は新山の苦い、そして沈痛な顔を見
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