第一章
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殺せない
新山真作は大日本帝国陸軍の軍人である。
士官学校を出て歩兵将校となった、そのうえで中華民国と大陸で戦っていた。
彼は同じ連隊に士官学校の同期であり親友である池永政伸がいた、池永は自分に厳しく他人に優しいそうした男だった。
彼と池永は広い大陸を転戦していた、その中で。
山東において敵の便衣隊を掃討する作戦に参加してだ、新山は作戦会議の後で池永にこうしたことを言った。
「軍服を着る相手ならな」
「うむ、戦いやすい」
池永もこう応える、新山から見ても精悍ないい顔だ。新山は自分の顔が赤い頬で丸い鼻の田舎者っぽい顔立ちに劣等感を抱いていたので池永のその顔が好ましくもありいささか妬ましくも思っていた。
そして彼のその顔を見つつだ、こうも言った。
「敵が軍人ならばな」
「我等も安心して戦えるが」
「便衣兵は困る」
「全くだ、いきなり後ろから撃って来る」
「しかも民衆の中に紛れている」
「誰が便衣兵かわからぬ」
それ故に困るのだ。
「卑怯なことだ」
「全くだ、しかもだ」
新山はさらに言った。
「これを亜米利加が後押しをしている」
「聞いている、義勇軍だな」
「重慶では出て来るらしいな」
「戦闘機に乗ってな」
「全く、亜米利加も英吉利もだ」
亜米利加だけでなく、というのだ。
「支那の肩ばかり持つ」
「もっと言えば蒋介石のな」
「あの者達から仕掛けてきてだ」
「しかも便衣兵まで使う」
「我等は正々堂々と戦っているが」
「卑怯なことをする方が助けられるとはな」
「不義な話だ」
「策が兵法だと言えば理に適っているが」
それでもというのだ。
「全く以てな」
「道理のわからぬことだ」
こんな話をした、しかし作戦は作戦であり。
彼等は便衣兵を掃討していった、この際連隊の上にある師団の司令部から間違っても民衆を便衣兵と誤認するなと言われていたので作戦は慎重に進められた。
村の百姓家の一軒一軒に入り武器がないかどうか詳しく調べ服の上から身体を調べもした、村人が逃げた村はそのまま空き家を調べていった。
そうして村も街も一つずつ調べていった、そして。
その中で撃って来た者は撃ち返した、損害を出しながらもだった。
彼等は作戦を進めた、そしてだった。
何とか多くの便衣兵を掃討していった、作戦は順調かに思えた。
だがある夜だ、彼等が宿泊している陣地にだ。
敵襲が来た、それは。
「また便衣か?」
「いや、暗がりの中に民国の軍服があるぞ」
「では民国の正規軍か」
「そうらしいぞ」
陣地の中でこうした話が行き交った、そして。
すぐにだ、連隊長は陣を組ませてだった。陣地の防衛を命じた。
新山もその中にいてだ、率いている
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