第五章
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餓鬼になっても人の耳元で人界での悪事そのままのことを囁き続けている、それを見て。
閻魔はやはり顔を苦々しくさせてだ、こう言った。
「わしははじめて見た」
「はい、私もです」
「私も同じです」
閻魔に続いて赤鬼と青鬼も言った。
「地獄道から餓鬼道に行くなぞです」
「普通はありませぬ」
「そこまで性根が卑しい」
「地獄での責め苦が終わってもですか」
「幾ら悪くともだ」
生前、人界での罪がだ。
「それは償われ清められる」
「人界での罪は」
「この地獄で」
「それであらためて悪くとも畜生道になる筈だが」
六界の一つだ、所謂人や修羅以外の生きものの世界である。
「しかし餓鬼になるか」
「考え様によってはこの地獄よりも悪い」
「その世界に」
「そしてだ」
閻魔は彼等のそこから先をここで見た、すると。
また地獄、無間地獄に落ちた。そして再び餓鬼に生まれ変わる。それから地獄に戻ることの繰り返しであった。
そこまで見てだ、閻魔も流石に呆れた。
「悔いあらためることがないのですな」
「こうした輩は」
「まさにですな」
「いや、醜い」
「あまりにも卑しい」
「全くだ、人界で醜悪を極めると」
それこそというのだ。
「そしてそれを全くあらためないのならな」
「無間地獄と餓鬼道を行き来する」
「そうしたものになるのですな」
「そうだな、しかしこうした魂もあるのか」
閻魔もだ、はじめて知ったことだった。
「六界は恐ろしい、人界にはこうした者達もいてだ」
「地獄にも来る」
「そうなのですね」
「そのことがわかった、嘘を吹聴し人を騙し煽り暴利を貪る悔いあらためない者達は」
まさにというのだ。
「最も卑しく醜い悪でありだ」
「それを悔いあらためないのなら」
「そうであるのなら」
「地獄の亡者と餓鬼を行き来するだけ」
「そうなりますね」
「死んだ時は」
「そうだな、もっともな」
閻魔は彼等についてこうも言った。
「こうした連中はそのことを自覚することもない」
「はい、全く」
「自分達のことを」
「そもそもこの連中の中に徳を考える心はない」
それも全くというのだ。
「人としての徳分を養おうなぞとはな」
「考えていませんね」
「ただ自分のことだけです」
「私利私欲のみです」
「己のことしかありません」
「神仏も信じていない」
神や佛の存在、そしてそういったものの教えもというのだ。
「あるのは自分だけだ、そうした者達だからな」
「ああなっている」
「そうなのですね」
「これでは破戒僧より悪くなるのも道理か」
閻魔の目は達観したものにもなっていた。
「何の徳分もなく己だけで反省も何もしないのではな」
「生きながら餓鬼になっている」
「そうし
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