第七章
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「喫茶店にでもかかっていて」
「それでだね」
「耳に、心に残っていて」
「無意識のうちに」
「それで夢にも出ているのよ」
「幻想交響曲は」
「そう、ベルリオーズがアヘンを吸いながら作曲したっていうから」
調べた結果このことがわかったのだ。
「それでね」
「独特の世界で」
「混沌としていて極彩色のね」
「そうした音楽だから夢でもだね」
「そんな風になってたのよ」
「そうだったんだ」
「兄さんは音楽家でいつも音楽の中にいて」
そしてというのだ。
「音楽に深く入っているわね」
「学んで演奏している曲にね」
「だから他の人よりも自然とにもよ」
「深く音楽に入るから」
「ふと聴いただけでも」
喫茶店か何処か、そこはわからないにしてもだ。
「心に残っていてなのよ」
「夢に表れていたんだね」
「それで悪夢としてうなされていたのよ」
「そういうことだったんだね」
「文学でもこうした話あるから」
マリーが今まで読んだ本の中にはそうした展開の話もあったのだ。
「だからね」
「僕は幻想交響曲の世界の中にいた」
「夢の世界でね」
「そうだったんだ」
「知らないわからないとね」
「夢は悪夢になる」
「そういうものだから」
知らないこと自体が恐怖となる、人は知らないものをそれだけで恐れる傾向がある。防御本能がある故にだ。
「だからね」
「そういうことかな」
「そう、これで謎は解けたわね」
「そうみたいだね、じゃあ」
「それじゃあ?」
「僕は幻想交響曲の世界の中にいる」
夢の世界でだ。
「そのことがわかったからもうね」
「うなされることもないのね」
「どんな世界かわかったから」
「そしてその世界の中にいるとわかったから」
「多分うなされることはないよ」
これでというのだ。
「これでね」
「それは何よりね」
「そして今日はね」
「今日は?」
「帰る途中にその曲のCDを買うよ」
マリーに顔を向けて微笑んで言った。
「そうするよ」
「それで聴くのね」
「うん、実際にどんな曲かね」
「兄さんのその耳で確かめるのね」
「ベルリオーズも勉強したいと思っていたし」
「いい頃合だっていうのね」
「そうした時を好機と考えてこそね」
まさにというのだ。
「音楽だからね」
「じゃあ帰ったらね」
「一緒に聴こう」
「わかったわ、じゃあまた聴きましょう」
マリーは微笑んでセインの言葉に応えた、そしてだった。
セインが演奏するバイオリンの曲を家の犬達と共に聴いた、サンルームの日差しの中で奏でられる曲は優しく柔らかく清らかなものだった。朝の日差しの中に相応しく憂いのない。
幻想交響曲 完
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