第六章
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「これって」
「そのままって?」
「こちらの話よ」
「こちらって」
「いえ、ただ本当にね」
「貴女の話ね」
「そうなの」
詳しい事情は言わなかった、だがマリーは最初にここでピンときた。そして。
実際の演奏を聴いた、演奏はナタリーの言う通りかなり独特だった。その曲を最後まで聴いて確信した。
「間違いないわね」
「?だからどうしたのよ」
「だからこっちの話よ」
「そうなの、変なこと言うと思ってるけれど」
「私の話だから」
「気にしないでっていうのね」
「そう、別にね」
ナタリーにはこう言う、そして。
コンサートが終わってナタリーと別れてだ、家に帰ってだ。
ネットで幻想交響曲について調べて確信はさらに深まった、それでだった。
次の日だ、前に話した時よりさらに寝不足に悩んでいるセインにだ。朝食の後で大学に行く前に話をした。
「兄さん、寝不足のことだけれど」
「そのことだね、相変わらずだよ」
「そうね、けれどね」
「けれど?」
「謎が解けたわよ」
家のサンルームで家の犬達を相手にバイオリンの練習をしようとする兄に言った。
「兄さんの寝不足のね」
「っていうと」
「兄さんベルリオーズは聴かないわね」
「うん、まだね」
「聴いたことないわね」
「勉強したこともね」
そちらもとだ、セインは答えた。
「ないよ」
「そうね、幻想交響曲も」
「聴いたことはないし」
それにだった。
「演奏したこともどんな曲かもね」
「一切知らないのね」
「ベルリオーズについてはね」
それこそという返事だった。
「まだ何も知らないよ」
「そうよね、けれどね」
マリーはここで幻想交響曲のことを話した。
そしてだ、こう兄に言った。二人はサンルームの中に共に座り演奏の練習の準備を置いていた。そのうえでの会話だった。
「どうかしら」
「うん、言われてみればね」
「兄さんの夢の通りね」
「そうだね、それじゃあ」
セインは自分の左手を自分の口元に当てて考える顔になって妹に答えた。
「僕の夢は」
「それの影響よ」
「そうとしか思えないね」
「兄さん何処かで聴いたのよ」
その幻想交響曲をというのだ。
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