第一章
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幻想交響曲
パリの音楽大学でバイオリンを習っているセイン=デッセィは今悩んでいた。顔は青ざめてしまっていて目の光も虚ろだ。
食欲もあまりない、レッスンだけは英気があるが。
誰が見ても体調が悪い、それで友人達も家族も心配していた。
「病気か?」
「悩みがあるのか」
「一体どうしたんだ」
「最近の彼はおかしい」
「どう見ても」
こう言うのだった、だが。
彼は元々相手から話しかけないと話をするタイプではない、それで自分からは言わないので誰も状況はわからなかった。
奇麗な金髪の左半分を後ろに撫でつけて整え細い彫の深い顔は眉は薄く鼻が高い。唇は薄く引き締まっている。目の色はアイスブルーで実に美しい。
長身痩躯がタキシードに似合う、足も長いのでそれもまたいい。だがその美貌も今は青ざめている感じだ。
それでだ、彼の妹であり大学で文学を学んでいるマリー、彼と同じ髪と目の色だがまだあどけなさの残る顔立ちで背は一六〇程で大きな胸が目立つ彼女がだ。家でだった。
休日に疲れた顔でリビングでコーヒーを飲んでいる兄のところに来てだ、何気なく問うた。
「兄さん、最近どうしたの?」
「どうしたのっていうと」
「随分疲れているみたいだけれど」
「ああ、そのことだね」
自分でもわかっているという返事だった。
「皆気付いていたんだ」
「気付くも何も」
それこそとだ、マリーは兄に言葉を返した。彼の向かい側の席に座りながら。
「明らかにおかしいから」
「最近の僕は」
「今兄さん自身が言ったけれど」
まさにというのだ。
「疲れた感じだから」
「寝れなくてね」
これが彼の返答だった。
「どうにもね」
「不眠症?」
「そうなるかな」
その青ざめた顔でまた答えた。
「今の僕は」
「どうして寝られないのよ」
「どうもうなされてね」
「悪い夢を見ているとか」
「どんな夢か覚えていないけれど」
「そうなの」
「そうだよ、けれどね」
セインは自分から言った。
「どんな夢かは覚えていないんだ」
「そういえば夢は」
文学を学ぶ者としてだ。マリーも気付いて言った。
「覚えていなくてもね」
「見ているね」
「それでその夢でなの」
「どうにもうなされていて」
そしてというのだ。
「最近ね」
「夢ね」
「どうしてなのかな」
「そうね、よくね」
ここでだ、マリーは文学を学んでいる立場から兄に応えた。マリーは成績優秀で大学院に残ってはとまで言われているのだ。
「夢は願望や恐怖、そうしたものがね」
「影響しているっていうね」
「兄さんにそうした感情があって」
「そして悪い夢を見ていてだね」
「毎日ね、それでね」
「寝られないのかな」
「そうじゃ
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