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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十話 謀議
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がある。だがそのことに嫌悪の表情を表す人間はいなかった。

「しかし、辺境へ行けば財力も武力も全てを失いかねん」
「娘達が皇位につけば直ぐに元を取り戻せる、そうではないか? 今我等に付き合って危ない橋を渡る必要は無い、そう考えたとしても可笑しくは無い」

「やはり、我等を切り捨てるということか?」
「馬鹿な、そんな事が許されるのか? これまで我等を散々利用しながらこの期に及んで自分達だけ助かろうなどと、そんな事が許されるのか、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯とも有ろう人物がそんな卑しい事を考えるのか!」

憤懣に満ちた声が上がる、それに同意する声も。卑しいと非難する声の裏側には恐怖がある。自分達だけでは勝てない、勝つためにはブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯の力が要る。自分達を見捨てないで欲しいという恐怖感が彼らを激高させている。

「だがおかしいではないか。二人とも陛下を説得するためといって夫人と令嬢を陛下の下に預けている。あれでは人質だ、いざという時には、彼女達こそが我等の旗印になるのだぞ! その切り札をみすみす相手に渡してどうする!」

「やはり我等を裏切るのか……」
「……」
「……」
重苦しい沈黙が落ちた。

「そのような事、許されるわけがありません。我等貴族こそが、帝国を守るという神聖な義務を持つのです。それを忘れ自家の繁栄だけを求めるなどあってはならないことです」

「……」
沈黙を破ったのは若い声だった。どこか自分の言葉に酔うような色合いがある。

「ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯には我等の盟主として行動してもらいましょう。我等貴族こそがゴールデンバウム王朝を守護すべき存在なのです。卑しい平民や、それに与する裏切り者どもに帝国は任せられません。お二方にもその神聖な義務を果たしてもらいましょう……」
「言うは容易いが、何か手が有るのか」

「有ります。これならブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯も必ず我等とともに立ち上がってくれるでしょう、必ずです」
「……」


帝国暦 487年 11月14日   オーディン 宇宙艦隊司令部  エグモント・シュムーデ


「フイッツシモンズ中佐、我々は明日から訓練に入る。その前に司令長官に挨拶がしたいのだが」
「少々お待ちください。……三十分ほど後なら時間が取れますが、いかがしますか?」

三十分後? ルックナー、リンテレン、ルーディッゲに視線を向けると皆問題ないというように頷いた。
「分かった、では三十分後に伺う事にする」

三十分後、我々は司令長官と応接室にいた。
「明日から訓練に入ります。しばらく会えなくなりますが、閣下も御自愛ください」
「有難う。フェザーンは色々と大変かとは思いますが、宜しくお願いしま
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