第一章
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トウブ
日本の八条商事という企業からだ、川端美樹はサウジアラビアの首都であるリヤドに行くことになった。だが。
共にリヤドに行く彼女の部下である三島由乃は心配そうにこう言った。
「サウジアラビアってイスラムの国ですよね」
「それは誰でも知ってることでしょ」
美樹は由乃に今更という顔で返した。
「それこそ」
「はい、私もそのつもりです」
由乃はその小柄な、一四八位の身体をさらに小さくさせた様な姿勢にさせて答えた。黒のショートヘアと大きな目が余計に子供っぽさを見せている。
「ですがイスラム圏ってはじめてです」
「大丈夫よ」
美樹はその由乃に微笑んで答えた。
「イスラム圏でも」
「文化が色々と違っていても」
「ええ、その違いはわかってるわよね」
「豚肉は食べない、お酒は飲まない」
由乃は一七〇近くある美樹の長身を見上げつつ答えた。美樹は長身であるだけでなく豊かな黒髪をさらりとしたロングにしており切れ長の睫毛の長い瞳を持っている、黒い眉に紅の唇が白い細面に合っていて濃紺の膝までのタイトスカートのスーツもよく似合っている。同じ様な格好の由乃がリクルートスーツに着られている様に見えるのとは対称的だ。
「犬もあまり飼わないんですよね」
「犬の涎が嫌われるからね」
「そうしたお国ですよね」
「そうよ」
美樹は由乃に答えた。
「そしてお肌の露出も駄目よ」
「女の人は」
「そこまでわかっていたらね」
「大丈夫ですか」
「とりあえずはね、そこに触れる様なことをしないと」
「イスラム圏に行ってもですか」
「大丈夫よ、まあ何かあったら」
上司としてだ、美樹は由乃に微笑んでこう言った。
「私を頼ってね」
「主任を」
「イスラム圏への出張はこれで四度目で」
「多いですね」
「不思議と縁があるのよ」
由乃にくすりと笑って答えた。
「あちらに」
「サウジアラビアに」
「あとクウェートやオマーンにも行ったわ」
「あちらにも」
「サウジは二度目よ」
二人が今度行くその国はというのだ。
「リヤドにもね」
「だからですか」
「安心して、わかっていることがわかっていれば」
イスラム圏でどうしてもということはだ。
「そんなに怖くないわよ」
「そうですか」
「そう、だからね」
「恐れないで」
「恐れがね」
それこそがというのだ。
「一番駄目よ、同率首位で」
「同率ですか」
「何も知らないこととね」
「無闇に怖がることが」
「駄目なのよ」
その双方がというのだ。
「だからね」
「私の場合はですか」
「後は無闇にこだわらない」
既に知っておくべきことは知っているからだというのだ。
「そうすれば問題ないわ」
「だからですね」
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