第二章
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「この通りにチャドリを着た娘さん達が通るらしい」
「娘さん達?」
「そうだ、娘さん達だ」
こうイマルに話すのだった。
「一人や二人じゃなくて何十人もな」
「何だ、その話は」
「おかしいと思うだろう」
「明らかに変な話だろ」
イマルは実際にいぶかしだ顔になって返した。
「何かありそうな」
「昔カブールでソ連軍が来た時にだ」
「その時に娘さん達が死んだとかか」
「ソ連に反対する組織とソ連軍の戦闘が起こってだ」
「巻き込まれたんだな」
「何十人もだ」
アフガニスタンの民族衣裳であるチャドリを着た娘達がというのだ。
「お互いの砲撃や銃撃に巻き込まれて」
「ここじゃよくある話だな」
ここまで聞いてだ、イマルは苦い顔で言った。髭のない痩せた顔が顰められている。
「何十年もそうしたことばかりだったからな」
「そうだな、それでだ」
「夜の十二時にか」
「ここにその時に死んだ娘さん達が何十人も通る」
「それは幽霊か?」
「いや、グーラらしい」
所謂食屍鬼だ、男をグールといい女をグーラと呼ぶ。
「それらしいな」
「幽霊よりもさらにやばいな」
「そして出会った者をだ」
「襲って食うんだな」
「そう言われている」
「だからだな」
ここまで聞いてだ、イマルは彼が今いる周りを見回してマスルールに言った。
「ここじゃ夜が近付くと皆さっさと店じまいするんだな」
「出るのは十二時らしいがな」
「その夜になる前にか」
「皆逃げるんだ」
そのグーラ達からというのだ。
「そうした話がある」
「その話はじめて聞いたがな」
「信じるか?」
「信じないって言えば嘘になるな」
これがイマルの返事だった。
「俺もそんな話は否定しないさ」
「グーラの話はか」
「幽霊だのジンもな」
そうした存在もというのだ。
「どれもな」
「ジンはコーランにも書いてある」
登場している、それも大いに。
「だからだ」
「実在するんだな」
「いないという奴がいるが」
マスルールはこのことは力説した。
「コーランに書いてある」
「それならだな」
「ジンはいる」
間違いなく、というのだ。
「コーランに偽りは書かれていない」
「そうだな、俺もそうした考えだ」
「あれは無謬の書だ」
「俺も家に持ってるさ」
読んではいないがだ、字は読めるがそれでも子供の頃に言われた言葉を頭の中に入れてはいるのである。
「一応な」
「一応か」
「読んでないが」
マスルールにも正直にこう言う。
「持ってるさ」
「それは残念だな」
「いつも読め、だな」
「時間が許す限りな」
「それが真面目なムスリムか」
「そうだ、だからな」
「やっぱりそうしないと駄目か、けれどな」
それでもと言うのだ
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