第一章
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チャドリ
アフガニスタンというと戦乱のイメージが強い、ソ連が攻め込み原理主義者の政権がありアメリカも攻撃を加えた。
こうした国だが人々は生きている、アフガンの首都カブールに住むイマル=サリプルもその一人だ。
街の市場で店を開いて色々なものを売っている青年だ、やや小柄で痩せた浅黒い肌の顔を持っている。家族はなく一人暮らしだ。
それで親しい客にだ、よく笑って言っていた。
「俺もそろそろな」
「かみさんをか」
「ああ、欲しいな」
こう言うのだった。
「ここに出て商いしてるけれどな」
「元々家族はあれだよな」
「バーミヤーンにいるんだよ」
そこからカブールに出て来ているのだ。
「それでここで一人で商売をやってな」
「生きてるんだ」
街の道の端に敷きものを敷きその上に売りものを並べてだ、売りものはその時その時で違っているにしても。
「一応な」
「一応かい」
「食えてはいるさ」
そちらは大丈夫だというのだ。
「家もあるしな、けれどな」
「大儲けにはなってないか」
「そうなんだよ」
こうも言うのだった。
「どうもな」
「辛いってことかい?」
「そこまではいかないさ、そこそこでな」
「それ以上でも以下でもない」
「食えていて家がある」
それだけだというのだ。
「まあそれだけでもいいか」
「そうかもな、この国だとな」
「戦争ばかりだったからな」
ぼやく様にだ、イマルはこうも言うのだった。
「何かと」
「この二十年、いや三十年以上か」
「戦争の話聞かない日はないな」
「そんな国だからな」
「こうして商売が出来て食えているだけで」
「アッラーの思し召しだよ」
「そうなんだろうな」
こう客にも返した。
「そう思った方がいいな」
「ああ、売るものが手に入ってな」
「何か売るものはな」
今は果物だ、それで果物屋になるが。
「この前は肉売ってたしな、俺」
「羊のな」
「その前は野菜だった、その前は雑貨だった」
「本当にその時で変わるな」
「手に入ったものをな」
それこそというのだ。
「売ってるからな」
「何でもだな」
「ああ、何屋とかは決まってないさ」
「そうした店ってことだな」
「とにかく手に入ったものを売ってな」
イマルは自分の商いのことも言うのだった。
「生きているさ」
「そこそこでか」
「けれど何時かはな」
「大きな商売するか」
「そうしてな」
「大儲けしてか」
「でかい家を建ててかみさんを迎えて」
笑って言うのが常だった、このことも。
「幸せになりたいな」
「その頃にはこの国も平和になって」
「そうなったらもう言うことはないさ」
「全くだな」
親しい客もこう返すことが多かっ
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