第五章
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「私はまだ」
「そうしたことはだね」
「はい、ありません」
「決めた相手もだね」
「いません」
「そうなんだね、やっぱりね」
ここまで聞いて笑顔で言ったスルタンでした。
「安心していいね」
「安心?」
「よかったら僕と結婚してくれないかな」
スルタンはお顔を真っ赤にさせてです。
そのうえで、です。こう言いました。
「奥さんになってくれるかな」
「私がスルタンとですか」
「正直に言うけれど一度この村にお忍びで来た時に君を見たんだ」
正直にお話します。
「そして君の姿に見蕩れて」
「それで、なのですか」
「いや、君の性格も知ってね」
調べてもらって自分で見てです。
「そのうえでなんだ」
「私がスルタンの奥方にですか」
「相応しいと思ったからね」
それ故にというのです。
「こうして村にお邪魔してね」
「御自ら」
「うん、いいかな」
あらためてヤシュムに尋ねます。
「僕と結婚してくれるかな」
「私で宜しいのですか?」
ヤシュムは戸惑いを隠せないお顔でスルタンに尋ねました。
「しがない村娘ですが」
「ムスリムだね」
「はい、そうです」
「ムスリムなら同じじゃないか」
これがスルタンの返事でした。
「そうじゃないかな」
「スルタンも村娘も」
「うん、全ての者はアッラーの前に等しいね」
コーランにある通りにです。
「ならそうしたことは問題ないよ」
「だからですか」
「そお、是非ね」
こうも言うのでした。
「宜しく頼むよ」
「信じられません」
「いや、夢じゃないよ」
くすりと笑って言うスルタンでした。
「このことは」
「だからこそ」
「うん、君さえよかったら」
そうならばというのです。
「宜しく頼むよ」
スルタンは既に馬から降りています、そのうえで自分の前に控えているヤシュムにお話するのでした。そして。
ヤシュムは戸惑ってからです、こう答えました。
「私なぞでよければ」
「なぞじゃないよ」
「そうですか」
「君でないと」
これがスルタンの言葉でした。
「駄目なんだ」
「私がスルタンの」
「そう、そして一緒に幸せになろう」
ここで遂にでした、ヤシュムもこくりと頷きました。そしてでした。
スルタンはヤシュムを奥さんに迎えて盛大な結婚式の後で二人で一緒に宮殿で暮らしはじめました。ヤシュムはとても優しくかつ賢くてスルタンは素晴らしい奥さんも手に入れました。
このことについてです、スルタンはこう言うのでした。
「全てはお忍びであの村に行ったからかな」
「奥方様にお会い出来たことは」
アリババが応えます。
「だからというのですか」
「うん、そう思うよ」
「それがアッラーの恩恵だといいますか」
「そう
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