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アバヤ
第二章

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「非常に質素であり皇族の方々はどなたも激務で」
「厳しさも」
「我が家の比ではありません」
「恐ろしい家ね」
「あの家は別格です」
 それこそ何もかもがというのだ。
「ヒジュラのさらに前より存在していますから」
「預言者ムハンマドが生まれる前から」
「あの国が言うには預言者の一人イーサーが生まれる前から存在しています」
 キリスト教で言うイエス=キリストだ、コーランではゴルゴダの丘で処刑されず強く生き抜いているがイスラム圏以外ではあまり知られていない。
「そうした家です」
「そこまで古くて」
「資産も凄いものですが」
「質素でしかも厳格」
「あちらの皇帝の方、天皇ですね」
 日本では天皇陛下とお呼びするが海外の言語ではそのまま皇帝と訳されていることが常だ。一国だけ何故か王と呼んでいるが王ではない。
「お住まいの皇居も質素で」
「こうした宮殿でもないのね」
「とんでもない位違います」
「皇帝なのに質素で」
「お食事もお部屋も服も」
 とにかく全てがというのだ。
「質素です」
「そうね、私は今のこの家で充分過ぎる程よ」
「何もかもがですね」
「日本の皇室に生まれなくてよかったわ」
「はい、では」
「学問もね」
「これより再びお励み下さい」
 学校にいる時と同じ様にとだ、ルクマーンはサウサンに言った。そして実際にだった。
 サウサンは学問、それに淑女としての振る舞いを身に付ける為に様々なことに励み続けた。裕福な名門に生まれた者の義務とも言えるそれに。
 そしてこの日はだ、学校はなかったが朝からルクマーンに部屋で言われた。
「今日は、ですね」
「ええ、私にとってはね」
 真剣な顔でだ、サウサンは自分の執事に答えた。
「特別な日ね」
「まさに」
「遂に、ね」 
 意を決した顔でルクマーンにまた言った、周りには彼女お付きの使用人達が何人もいる。
「未来の夫と」
「お会いになります」
「この日が来たのね」
「我が国の方で」
「家はドバイではないけれど」
「はい、あちらもです」
 相手の家もというのだ。
「アミール家といいまして」
「古い家ね」
「預言者ムハンマドと共にヒジュラを経た家です」
「そして代々軍の先頭に立って戦った」
「武門の家です」
 そのアミール家はというのだ。
「そしてお嬢様のご主人は」
「三男の方ね」
「はい」
 その通りというのだ。
「お歳は二十歳です」
「四歳違いね」
 あちらの方が年上というのだ。
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