暁 〜小説投稿サイト〜
スキュア
第二話
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番人、槍や掌に飛んできた血液の粒を見ていると、遠い昔に食べた朝食が胃の中から昇ってくるような嫌な感覚に襲われる。
「ちょっと有効範囲が伸びましたか?」
「かもな」
 真冬が血だまりを飛び越えて、俺の方に近づいてくると返り血のついた俺に手をかざしながら告げる。俺が返事を返している間に、体に付着した血液はある程度回収され、少しだけ綺麗になった自身の槍やグローブを見つめる。明らかに槍の届く範囲ではなかった。しかし番人の横腹に槍が突き刺さり、一瞬のスキを生み出すこともできた。あれはいわば俺の能力だ。俺の能力は突きを強化する、ただそれだけの能力だ。他の人に比べて多様性はないし、突きの有効範囲は素手でも及ぶので、情報化社会が進みタッチパネルのものが増えていく昨今では、その操作も満足に操作できない、正直不便な能力だが、この能力のおかげで近頃は鍛えるという趣味が増えたことには感謝もしている。

「まぁ、とりあえず帰ろう。亡骸は回収班に回しとけ」
 先生の言葉に真冬は凝集した血液をゆっくりと近くの草むらに落とし、俺は槍の先端を軽く布で拭くと、先端にカバーを被せて近づいていく。
「しかしまぁ、最近は随分増えたものだな。番人」
「先生。これでも隠しきれるものなんですかね」
 真冬は思ったままの疑問を口にする。真冬の血液から、奴らの肉体まで回収する回収班というやつらの腕がいいのか、それとも誰も通報しないという状況がよかっただけなのか。しかし、いつかはこうした血塗れの世界が表になる日は近い。それでもそれが表にならないことは俺たちにとっては長い謎である。
「さぁな。ただ今わかってるのは、これだけやってもやつらは微塵も懲りてねえってことだけだ」
 苦み走った顔で血塗れの死骸を見つめては、俺達の肩を叩くと、鍵が再び光を放ち、俺たちの視界が真っ白に染まった。
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