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スキュア
第二話
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の音が吹き荒む。誰も口を利かない。いや、この緊張感に口を開く余裕もない。途端、風を裂く高い音が耳に届く。そして地鳴りの音が耳に届き始める。
「――来たぞ!」
 ようやく先生が口を開くと共にけたたましい声が耳に突き刺さる。聞き続けると嫌気がさすような一定の高音が、鼓膜に不快な残響を残し続ける。目の前から現れた番人は身軽に俺たちの体を飛び越える。あまりのスピードに手の出ない俺たちとは異なり、頭上を越えた瞬間先生が数歩下がって拳銃の引き金を引く――!
 番人の腹に命中したのか、再びその超音波のような声が耳を傷めてくる。耳に片手を抑えつつ、番人の姿をしっかりと確認する。赤い瞳に細く引き締まった筋肉が俊敏に動くことを示しているような四足、鋭く尖った耳に明らかに肉食動物と思われる牙が見える。茶色の毛並みには時折斑点のような跡が見られ、その首には赤いマフラーがつけられ、腰に衣類のようなものが巻き付けられ、腕には光り輝く装飾が日光に照らされて輝きを放っている。
「気をつけろよ。相当なスピードだ」
 その言葉に気を引き締めつつ、距離を保つ俺たちと番人。足をゆっくりと動かして、その視線を送りあいながらゆっくりと足を動かしていく。先生を頂点に右に真冬、左に俺の三角形で互いに邪魔しない程度の距離をとって、じりじりと詰め寄っては、警戒体勢の番人も簡単に詰め寄らせてはくれない。睨み合う両者。手汗が俺の掌からグローブへ伝い、手元の不快感がぬぐいきれない。目の前の異形の番人が誰かに狙いを定めている。腹に負った傷に気をやるようにしながらも、それでも獲物を狩ろうとする本能が消え失せる気配はない。前足に力が入るのが見える。そして次の瞬間、番人は宙を舞う。そして、真冬の方へ荒い息とともに飛びかかる!
「真冬!」
 左足を軸足にし、素早く回転し、槍頭を真冬の方へと向ける。飛びかかる番人と輸血パックをぶちまけて盾を作る真冬の両方が視界に入ってくる。殺すか、殺されるかの瀬戸際を、文字通り横槍を刺すように俺は強く地面を踏みしめ、槍の先端を素早く伸ばし、そしてここで

 放つ――!!

 弱弱しい声と、大小さまざまな赤い雫があらゆる方向へと飛散する。俺が脇腹に開けた大穴の痛みが堪えたのか、空中で首を振り回す番人に弾丸と円錐状の赤い物質が貫通する。血液の盾の向こう側から指にコーティングした血液で爪を伸ばした真冬と、その光景に微動だにしない先生の銃口が静寂を生む。ピクリとも動かない番人に終わりを告げるように先生の銃口から煙が細く立ち上った。
「うえっ。口に血ィ入った……」
 俺はそう言うと、口の中の血を唾とともに吐き出す。特に毒素があることは言われていないが、それでも口の中にこの苦い味が広がる感触だけはどうしても嫌だ。鼻を突くような血の臭い、目を刺すほど刺激的な赤の世界のなか、横たわる
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