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百人一首
48部分:第四十八首

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第四十八首

                   第四十八首  源重之
 この身は波の前にある砂のようなもの。
 心はよりそうなってしまっている。
 波の前にある砂は儚く消えて崩れていってしまうもの。
 今の自分は身も心もそうなっている。
 見れば岩も砕けている。
 波が岩を動かす筈もないのにそれでも。
 波は繰り返し岩を打ちそれにより砕いていた。
 波に打たれた岩が砕け散って。
 それでそこには砕けた岩の残りがあるだけ。
 こうして岩でさえもやがて波の前には砕けていく。
 けれどあの人は違う。あの人だけは違う。
 いつも冷たく。岩のように冷たく。
 ずっとそこにあるだけ。振り向くことすらない。
 そんなあの人を想っている自分が波になろうとも。
 それでもあの人の心を砕くことはできない。
 どうやっても砕くことはできない。
 この気持ちを歌にしてみようと思い。一つ詠ったその歌は。

風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけてものを 思ふころかな

 歌にかけている波と己の願い。けれどあの人は岩になってもその岩は波の前にある岩とは違い。何処までも固く冷たく。身動き一つしはしない。
 そんなあの人を今でも想う。想ってもあの人の心は砕けてはくれないけれどそれでも。想わずにはいられない。自分の心が先に砕けてしまいそうになるのも感じながらも。それでも想わずにはいられない今なのだった。それが何時終わるのかさえもわからない。辛さは募るばかりなのだった。


第四十八首   完


                 2009・1・31

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