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百人一首
47部分:第四十七首

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第四十七首

              第四十七首  恵慶法師
 荒れ果ててしまった庭に古ぼけてしまった屋敷。
 かつては栄華を誇ったこの屋敷も庭も今の有様。
 かつては華やかだったのに今では雑草に覆われて。
 百年前の姿は忘れ去られてしまった。
 雑草は茫々と生い茂って。屋敷の中にまで生えている。
 そんな屋敷に誰かがいる筈もなく。
 誰も訪れることすらなくなってしまい。
 寂しくそこに朽ち果てていっていく。
 けれど一人だけ。昔をしのんでやって来た。
 秋だけは。かつてのその栄華を忘れずにこの屋敷にやって来て。
 せめてもと。この荒れ果てた屋敷に何かを置いていく。
 その何かは人である自分にも目には見えるし心には届くけれど。
 それでもささやかなものに思えて仕方がない。
 そのささやかな、けれど秋が置いてくれたものを偲び。今歌にする。

八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり

 秋だけが訪れるこの荒れ果てた屋敷。そこにあるものを詠い今はその場を去る。
 秋が一人で残るこの屋敷。かつての栄華は秋だけが覚えている。最早人はそんなことは忘れ去ってしまって誰も覚えてはいない。けれど秋だけは違っていた。何時までもかつての栄華を覚えていて。そうして今もこの屋敷を訪れるのだ。人もいなくなってしまったこの屋敷を。


第四十七首   完


               2009・1・30

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