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約1つのラベルと心臓
第n+8話 みんみんゴーゴー
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 二会手(にえで) 夏雄(なつお)が目を覚ますと、珍しい事にそこは柔らかい1人用の椅子の上だった。
「おはよう」
「あー、おはよ」
 夏雄の意識はまだ醒めきっていないが、夏雄の右にいるのが侍乃公他(じおれた) 美都子(みつこ)だということは理解した。
「丁度好きなグループのコンサートがこの世界で地球外公演やるって聞いてね。他の人誘いにくかったから丁度寝てた夏雄君を連れてきたの」
「えっと、」
「今いるのは、音楽ホールよ。と言っても、そんなに畏まる必要は無いけど」
「……成る程」
 確かに静かな話し声がわいわい聞こえる。夏雄は取り敢えず現状を理解した。
「それで、なんていうグループなんだ?」
「セミチャンピオンって言うの」
「セミチャンピオン?」
「そう。蝉人間の5人組和風ジャズバンドよ」
「蝉人間!?」
「えぇ。蝉と人間の子供よ」
「蝉と人間って、はぁ?」
「そんなこと言ったら夏雄君だって、人間人間じゃない」
「だからなんだよ」
「思ったのだけど、マウンテンゴリラの学名ってゴリラ・ゴリラ・ゴリラじゃない。マウンテンゴリラとマウンテンゴリラの間に生まれた子は、ゴリラ・ゴリラ・ゴリラゴリラ・ゴリラ・ゴリラになるってことよね?」
「その2回言うやついるか?」
「大事よ。いつもは端折ってるだけなんだから。コンビニみたいに」
「いやそういうもんじゃねぇだろ」
「リモコンみたいに」
「だから端折ってるとかじゃねぇって」
「糸蒟蒻みたいに」
「それは略してねぇじゃねぇか」
「木を見て森の魚心って言う位なのよ。いつもは忘れてたことにふと思いを巡らすことで創造性と沈黙しさを磨くことも出来るのよ。あとアンチエイジング」
「俺若いんだけど?」
「何言ってるの夏雄君!?夏雄君だって、80年経てば20歳ぐらい年を取るのよ!?」
「俺はうるう年生まれかなんかか」
「時は朝バナナダイエットって言うじゃない。後でやろうって飲まず食わずで延々言い続けていたらその内干からびて死んじゃうのよ?」
「それ年取るとか関係無くねぇか?」
 そんなこんなで会話していると、まもなく開演です、というアナウンスがあり、それを聞いた人達はぞろぞろと立ち上がった。
「立つのか?」
「ええ」
 美都子が立ちながら頷くと、夏雄も合わせて立ち上がった。
「セミチャンピオンのコンサートは立って喝采を上げたり飲食しながら聴くものなのよ」
「へぇ、結構フランクなんだな」
「ただ、やっちゃいけないことはいくつかあるわ。例えば、他の音楽を流すこととかはしちゃ駄目よ」
「そうだな」
「ラーメン屋のにんにくを、買ってきたピザに乗っけてガーリックピザってやってたら、粉骨砕身させられても文句言えないでしょ?」
「意味違うけど大体分かった」
「他には、蝉以
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