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百人一首
43部分:第四十三首

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第四十三首

              第四十三首  権中納言敦忠
 この想いは尽きることがない。
 抱き締めることができればそれだけで。胸も何もかもを締め付けているこの苦しみが消えるだろうと思っていた。そうすればそれで救われるのだと思っていたのだった。あの時は。
 けれどこの手で実際に抱き締めてみると。
 それで終わりではなかった。
 苦しみは募るばかり。愛の苦しみは深まっていく。
 思いを遂げるまでこの苦しみは。尽きることがないのだろうか。
 そうも思いさらに苦しみを感じていき。
 その中で焦がれて身体も心も燃やしていく。
 この苦しみ。どうにもならない苦しみ。
 この苦しみに耐えることはできなく狂いそうになりその想いを今歌に託し口ずさむのだった。

逢ひみての 後の心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり
 
 詠ってみても心が苦しみから解き放たれることはない。その苦しみの中で耐えられなくなりそうになる中で今も苦しむ。最後まであの人と共にならなければ何もなかったのと同じとさえ思いを募らせながら。苦しみを抱き続ける。
 苦しみに耐えることはできそうにはないけれどそれでも今は受けることしかできなかった。抱き締めても幾ら恋焦がれても果てまで辿り着かなければどうにかなるものではないものだけに。今はただ受けるしかなかった。この果てない恋焦がれる苦しみを。


第四十三首   完


                 2009・1・26

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