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百人一首
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第四十二首

                  第四十二首  清原元輔
 変わる筈がないと思っていた。
 あの人に限ってそれはない、絶対に有り得ない。
 信じ込んでいたし信じたままでいたかった。
 けれどそれは裏切られて。
 変わらぬ心を約束したのに。涙で濡れた袖を交えさせてまでした約束だったのに。
 それは変わってしまった。信じられないことだけれど変わってしまった事実は自分でも受け入れるしかないものだった。事実なのだから。
 女心は変わりやすい。そんな言葉はあの人に限ってないと思っていたのにそれは違っていた。そう思わざるを得なかった。
 あの人は忘れてしまったのか。あの約束を。
 嵐が来ようが浪は山を越えたりはしない。それと同じで自分達の誓いもまた変わることはないと二人で言い合ったのに。それでも変わってしまったのだった。何事も、あらゆることが変わってしまうという現実は。ここで自分自身に刻み込まれてしまうことになった。そうなっては欲しくなかったというのに。
 その変わってしまった女心を思うとどうにも辛くて。それで今その気持ちを歌に託すことにした。

契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 浪越さじとは
 
 詠ってみても心のこの悲しさは消えることはない。それでも今は心を静かにしていたかった。
 だから詠う。この歌を。涙を堪えつつ詠いそれを終えてから一人去る。このいたたまれない気持ちを胸に抱いて。


第四十二首   完


                 2009・1・25

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