第46話
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『うむ、戦の基本ぞ!』
ドヤ顔で腰に手を当てている袁紹を他所に、塾生達は再び顔を見合わせた。
多を持って少に当たることが基本であることくらい、彼らも承知している。
だからこそ、その少を相手にどれだけ被害を抑えられるか。
あるいは多を相手に、どのような戦術を用いて対抗するかを話し合って――
『十倍の戦力差を、戦術で覆すことが出来るか?』
『!?』
唐突に明確化された仮想敵の数字に、塾生達は息を呑む。
無理も無い。彼らが想定する多は精々三倍までが限度、それ以上はまともな戦にならない。
いくら善戦した所で、数の暴力に飲み込まれるだけである。
『十倍の戦力差に兵の錬度、士気、補給、将の質を揃えれば負けは無い。
そこに戦術も織り交ぜ、勝率を上げるのだ』
――つまり貴方は、戦略的勝利を確信しているわけね。
言って、華琳は高台に配置させていた物見からの報告を思い出した。
彼によると、大河の向こう側は数十里に渡って陽軍で埋め尽くされているそうだ。
間違いなく袁紹は全力で魏国を潰しに来ている。
「我が軍の将兵は“ごうけつ”!」
各名将や軍師に始まり、黄巾以前から乱世に備えて鍛練を施された兵士達。
棄鉄蒐草の計や広宗で降伏させた元黄巾賊達を取り込み、動員戦力は五十三万。
さらに本国にも一国と同等の兵力を残してある。
「我が軍の補給路は“いのちをだいじに”!」
補給拠点には攻守優れた星とその隊、約三万の兵力が宛がわれている。
補給の護衛にも大軍が使われ、道中には斥候を惜しみなく配置した。
「我が軍の戦法は“いろいろやろうぜ”!」
人海戦術による正攻法から、奇策を入れた十六通りの戦術を臨機応変に選ぶ事が出来る。
「そして後詰めは……“ガンガンいこうぜ”だ」
始め魏軍に当てる兵力は二十五万、残る半分は予備戦力として待機させる。
そしてこの地での勝利を決定付けた後、先陣部隊にこの場の制圧を任せて彼等は進軍。
一気に魏国の首都を攻め落とす手筈だ。
「何度でも言うぞ華琳。我が軍の勝利は既に決定している」
「……」
そんな彼の声明を受け、魏軍の軍師である郭嘉が険しい表情を作る。
――嫌な士気の下げ方を……。
魏軍の兵力は五万。眼前の陽軍を相手取るには心許ない数字だ。
彼らをこの場に留ませているのは、地形の有利よりも華琳に対する忠義による所が大きい。
要は主に対する忠義で恐怖をかき消しているのだ。
そんな彼らに袁紹は陽軍の有利を言って聞かせ、兵を数十里横陣に敷いて視覚的に見せ付けた。
これでは流石の魏軍にも影響が出る。精鋭達は問題ないが、
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