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恋姫†袁紹♂伝
第46話
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魏の宣戦布告から半月、各地の文官達がその行動を疑問視する中、ついに魏軍は袁陽領へと進軍を開始した。

 陽軍は予め編成してあった迎撃部隊を派遣。魏軍を撃退すべく息巻いた彼らだが――
 その動きを察知した魏軍は、突然軍を後退させ始めた。
 これを受けて陽軍は追撃を選択、魏軍の後を追う形で魏領へと侵攻した。

 用心深い袁紹が追撃を決定したのには幾つか理由がある。
 
 一つは自軍の規模。相手を圧倒する為に用意された大軍は、数日の移動だけでも莫大な費用が掛かる。それを用いて戦果なしでは骨折り損だ。兵達の士気にも大きく関わるだろう。
 
 二つ目は大国としての体裁。魏国は陽国に次いでの大国だが、今回の件に目を瞑るのは沽券に関わる。大陸一を誇る強国として、他に舐められるようではお仕舞いだ。
 
 三つ目は魏国の軍事力。陽国に次ぐ形で建国した魏だが、その発展は目覚しいものがある。
 年ではなく月単位で国力を増加させ続け、大陸中の注目を集めている。
 これを放っておいては、かの国の強大さは増すばかりだ。
 故に発展途上の今が叩き時であると、陽軍の軍師達による満場一致で追撃が決まった。

 袁紹個人としては、もう少し地盤を固めてから魏と決戦に臨みたかったが……。






 現在、両軍は大河を挟んで睨み合っていた。

 魏軍は官渡から河を三つ渡った先にある白馬を拠点に横陣を組み、少しでも陽軍に動きがあれば迎撃する構えだ。
 両軍共に士気は上々、しかし戦は始まらなかった。
 大河を渡る橋が一つしかないのも原因だが。何より、既に日が沈みかけていた事。
 暗闇の中での戦は同士討ちが多発する。それを嫌った両軍の、本番は明日という暗黙の睨みあいであった。
 
 そんな中、魏軍から三騎飛び出し河の岸で静止した。
 華琳だ。夏侯姉妹を連れ、静かに陽軍を見据えている。
 
 少し遅れて陽軍からも三騎飛び出した。無論、袁紹と二枚看板である。
 対岸で見つめ合い。張り詰めた空気のなか袁紹が口を開いた。

「華琳ーッ! 我だーッ! 降伏してくれー!」

「………………は?」

 迷族、両軍の中央で降伏勧告を叫ぶ。

 突然の言葉に目を丸していた華琳だが、数瞬の間を置いて重々しい溜息を吐く。
 明日自分達が何をするのかわかっているのだろうか、せっかくの緊張感が台無しである。

「貴方が降伏しなさい」

「ファッ!?」

「わりと本気の提案よ。私たちの野望に対して、この両軍の戦ほど無駄なものは無いわ。そうでしょう?」

「……」

 仮に魏軍が敗北し陽国に併合されたとしても、華琳の野望である覇は成せる。
 その逆も然り、魏国が覇を成した大陸で袁紹は満たされる世を作れる。華琳の配下として。
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