41部分:第四十一首
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第四十一首
第四十一首 壬生忠見
気付けばもう。噂は広がってしまって。
ふと見て想いはじめて。そうしてまだ感じだしたばかりなのに。
これから打ち明けようと想っていたところ。考えだしていたところ。
まだそれだけのところだったのに気付いた時にはもうだった。
噂が広がり伝わってしまった。
言葉に戸口は立てられず。瞬く間に広がってしまった。
気付いた時にはもう手遅れで。皆が知ってしまっていた。
言葉は風よりも早く、何にも防がれず広まってしまう。
そのことを今自分でも知るのだった。
知ってしまってももうどうにもならない。折角の初恋が。
気付いてしまった時にはもう壊れてしまいそうになっていた。
皆が。周りが知ってしまっていて。
それで誰もが自分を見て囁き合うので。
そのことを耳にしてどうにもならないことがわかって。もう自分ではどうにもならなくなってしまっていて。
壊れてしまいそうな初恋。そのことを嘆いているとふと出て来たのは。歌だった。
恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
歌を歌えどどうにもならず。心がいたたまれなくなってそれでどうにも仕方なくなって。
それで嘆く心を抑えられず。今こうして歌に留めてこの場を去るしかなかった。他には何もできなくて。
第四十一首 完
2009・1・24
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