4部分:第四首
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第四首
第四首 山部赤人
元旦に向かった場所は富士。本朝の聖地であるそこにわざわざ元旦に来たのには理由があった。理由がなければ向かうことはない。
辿り着いたそこは雪に覆われ白銀の世界だった。そこで従者の一人が霊峰を指差して彼に言うのであった。
「藤も見事な衣も着ていますな」
「そうじゃな」
彼は従者の言葉に笑顔で応える。従者の言葉通り富士は今は雪により白くなっている。この富士を見る為にわざわざ大和からこの富士まで来たのだ。
だが彼はやがて従者を休ませて一人で田子の浦に出た。そこからも富士は見える。白銀の富士はそこからも見事な姿を見せている。彼はそれを見つつ詠うのであった。
田子の浦に うち出てみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ
周りには白い雪が降っている。冬の田子の浦は寒い。しかし彼はそれでも微笑みその田子の浦に立ち続け富士を見ていた。その美しい富士を。
従者が来て彼に寒いから場所を移ろうと言うがそれでもだった。彼は残ると言うのである。
「いいではないか。雪位」
「ですが」
「今は富士を見ていたい」
これが彼の言葉であった。
「今はな。だからこそ」
「ここにおられるのですね」
「そうだ。見てみるといい」
従者にも富士を見るように勧める。
「あの白い衣を着た富士をな」
白い富士はこの時も彼の前にその姿を見せていた。元旦の白い衣を着た富士。それは何時までも彼の心と歌に残ることになった。
第四首 完
2008・12・2
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