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魔法少女リリカルなのはINNOCENT 〜漆黒の剣士〜
第29話 「憧れと感謝は程々に」
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あなたもちゃんと挨拶をしてください。挨拶もできない子に育てた覚えはありませんよ」
「別にぼけっともしてないし、今からしようとしてたところだ。というか、お前は俺の何なんだ? 俺はお前に育てられた覚えはないぞ」

 俺がお前を育てた、ということならまだ分かる。小さい頃は面倒を見ていたわけだし、現在の性格を形成している要因のひとつになっていてもおかしくないのだから。

「私ですか? そうですね……私はあなたの最大の好敵手()でしょうか」
「おかしなことを言われたわけじゃないし、それで別に良いんだが……何でわざわざ違う意味合いまで込めて言った?」
「きちんと理解しているとは、さすがは私の最大の好敵手()です」

 うん、だから別の意味合いを込めないでいいから。絶対俺にしか伝わってないし、お前のそういうところを理解出来るようになるにはそれなりの時間を有するからね。初対面のこの人達じゃまず理解できないよ。お前がただ言いたいだけなのかもしれないけどさ。

「まあそれは置いておくとして」
「勝手に置かないでください」
「いや置くから、お前のおかげで話が進んでないからね。あとで話は聞いてやるから少し黙ってなさい」

 やれやれ、別の街に来て浮かれているのかいつも以上のマイペースさだな。ここが海鳴市であったならこれほど話の腰を折るような発言はしなかっただろうに。近しい人間以外には基本的に淑女的な振る舞いをする奴なんだから。
 それにしても……日向って人はともかく小野寺って人は落ち着きがないな。シュテルのファンだからなのか、一緒に居る俺がどういう人間なのか気になってるのかもしれないけど、露骨に交互に見る必要はないと思うんだが。俺達の関係を疑うのは学校の連中だけで間に合ってるし。

「えっと、こっちが話を逸らしたのに戻すのもあれなんですが……俺は夜月翔って言います。お連れの方がさっきから凄まじく俺とシュテルを交互に見ているので説明しておきますが、俺とシュテルの関係はただのクラスメイトなんで誤解しないでください」
「え、あ……べ、別に誤解してたりはしな、い。ただシュ、シュテルさんと仲良しなんだなって思っただけ、で!」
「ショウ、聞きましたか? あなたは客観的に見た場合、私と仲良しに見えているようです。なのでただのクラスメイトという言葉に関して撤回を要求します」

 キリッとした顔で何を言ってるんですかねこの子は。
 というか、何でそんなにマイペースに話すことができるわけ? 俺が話を進めようとしてるのはお前も理解できてるはずだよね。それなのにどうして構ってと言わんばかりに話しかけてくるのかな。

「……話の続きですけど、今日俺達が一緒に居るのは」
「やれやれ、ここで華麗にスルーして話を進めるとは……親の顔が見てみたいものです」
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