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スキュア
第一話
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あー……。腹減ったぁ」
 寮に入ると、まず、自分の体から、そしてゆっくりと槍を入り口に通し、そのまま階段を昇って行った。テスト期間でもない今の時期にはさすがに階段で人が混み合うこともない。仮に混み合ったとしても、この寮に関しては解錠人しか住んでいないため、特に変な目で見られることもない。階段を上ってすぐ右が俺の部屋だ。部屋に入ると、壁に作ってもらった槍置きに壁を擦らないように槍を置いて、ひとまずベッドに座り込む。冷静になって時計を覗き込むと現在の時刻は11:30。これほどの時間なら午後の講義には滑り込みセーフも可能であろう。ひとまず鞄の中をチェックして、いくつかの本を取り出すと、モノに溢れて散在したテーブルの上にそっと置き、鞄を近くに置くと、着替えとバスタオルを用意してシャワーを浴びることにした。すっかりと濡れてしまった居心地の悪いシャツを洗濯籠へと放り込むと、次々に服の山をこしらえ始めた。


「ここに来てもう2年……。時が経つのは早いもんだ」
 暖かい滝に体を浴びせては、ふと昔のことを思い出す。俺がここに来たのは、この番人の問題の初期も初期のころだった。彼らが現れたのが3年前、そして俺が能力に目覚めた2年前とほぼ同時にこの学園が設立された。本来、この学園は表向きこそ金持ち専用に近いところがあり、ほとんどの学生はそれにあてはまるが、その中に数人俺のような解錠人が紛れ込んでいる。政府の圧力により、こうした学園の第一号として生まれたのが、ここだ。まだまだ解錠人の数が少なく、そこまで多くの解錠人を育成するには至っていない。だからこそ、まだまだこの学園で十分に事足りてしまう。それだけに、どちらの解析も正直そこまで進んでいないというのが、現状の課題である。番人の目的も、解錠人を探すこともまだまだ難しいのだ。俺はお湯を止めると、風呂場を後にした。
 風呂を上がると、ケータイが規則正しく振動していた。技術が発達した現代でも、未だにメールが送られてくるのは、ほぼ一人しかいない。タオルで頭をぬぐっては、その画面を確認する。そこには文面でこう記されていた。

 ――番人発見。直ちに次の場所へ向かわれよ。場所は……

 そっとケータイの画面を閉じると、汗をぬぐっては壁の槍に目を移す。戦いのときは近い。
槍が窓から入る日差しに照らされて、ギラギラとした光を放った。

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