第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#17
DARK BLUE MOON\ 〜End Of Sorrow〜
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ありがとうと言ってくれた。
狭い水桶での湯浴みの時、その小さな手で背中を拭ってくれた。
客の残した紅茶をくすねて持ってきた時、嬉しそうに微笑む彼女と二人でそれを飲んだ。
他にも、他にも、たくさん、たくさん……
なんで、なんで、忘れてたんだろう?
大切な事も、こんな地獄の底に差し込む光すらも、憎しみは覆い隠してしまう。
誰の所為でもない、それは全部、自分の所為。
どんな辛い事も苦しい事も、全て 『運命』 の所為にして、
勝手に委ねて、抵抗すらしなかった自分の所為。
己に流れる血は何よりも熱く、天に瞬く星は果てしなく明るく、
そして人間は、こんなにも温かいのに。
それなのに、その事に気づかず、勝手に自分で決めつけてスベテ捨てていたんだ。
一番大切なものも、何もかも。
「ごめんね、ルルゥ……」
自然と涙が、溢れてきた。
もう、とうの昔に涸れ果てたと想っていた、透明で暖かな雫だった。
「ごめんね、本当に、ごめんね……」
死に至る己を救った不思議な能力を使った所為か、
胸の中で深い眠りについた少女に、何度も何度も語りかけた。
柔らかな栗色の髪を撫でながら、白い滑らかな肌に触れながら。
何度も、何度も。
“ありがとう”
この娘は、天使だ。
自分を病魔からだけではない、終わりのない精神の暗黒からも救ってくれた。
だから今度は、私が護る。
何が在っても、絶対に護ってみせる。
この世の地獄なんかに、決して堕とさせはしない。
その為なら、喜んで身も心も捧げよう。
大丈夫。
出来る、出来る筈だ。
スベテを憎んで、世界を呪って生きていくよりは、
きっと、ずっと簡単なコトの筈だから。
この娘は私の “希望” そのものなのだから。
破れたカーテンの隙間から漏れる、夜明け前の光を浴びながらそう誓った。
ソレが自分に “誰か” から与えられた、
掛け替えのない 『使命』 で在るような気がした。
←To Be Continued……
『ラルク・アン・シエル』
本体名−ノエル・ル・リーヴ(ルルゥ)
破壊力−なし スピード−A(治癒速度) 射程距離−C
持続力−A 精密動作性−A(治癒精度) 成長性−完成
能力−触れた対象の存在を癒し、あらゆる重傷や病魔を駆逐するコトが出来る。
ただしルルゥが心の底から救いたいと想った者にしか効果がない。
戦闘能力は皆無に等しく、自分の傷は癒せない。
「シエル」 を “シェル” と呼ぶと、拗ねて出てこない場合がある。
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