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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十七話 呪縛
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した? 宇宙艦隊司令部の人間が司令長官の能力を云々するなど気でも狂ったか?
軍において上官の能力を云々するなど許されることではない。人の生死に関わることなのだ。部下が上官の能力を誹謗すればどうなるか? それが広まればどうなるか?
上官の威権が損なわれ命令に従わない部下が出てくるだろう。つまり軍としての機能が発揮できないことになる。それを宇宙艦隊司令長官に対して行なった? 銃殺刑にでもなりたいのか?
「噂の出処はローエングラム伯の分艦隊司令官達だ」
「分艦隊司令官?」
思わず鸚鵡返しに言葉が出た。ローエングラム伯の分艦隊司令官達、その言葉に嫌な予感がした。だがエーリッヒは俺のそんな思いに気付かぬかのように平静な声で話し続ける。
「そう、ブラウヒッチ、アルトリンゲン、カルナップ、グリューネマン、ザウケン、グローテヴォール、彼らがゼーアドラー(海鷲)で酒を飲みながら話した」
「オーベルシュタイン准将の意を受けてか?」
俺の問いにエーリッヒは僅かに小首をかしげた。
「どうかな? 気付かないうちに指嗾されたのだと思う。だがあっという間に広がったよ。あるいは別に広めた人間が居るのかもしれない」
そう言うとエーリッヒは薄く笑った。
「なんのためにそんなことをする。何の意味がある? シャンタウ星域の会戦は卿の力で勝った。誰もが認める事実だ。戦術家云々に何の意味があるというんだ」
思わず強い口調になった。しかしエーリッヒは笑みを浮かべたまま全く動じる様子を見せなかった。
「意味は有る。ローエングラム伯はシミュレーションで無敗だ。実戦指揮官としては私よりも彼のほうが上だと言いたいのさ」
「……」
「戦場では誰もが強い指揮官、勝てる指揮官を求める。私に万一の事が有った場合、スムーズに彼が実権を握れるようにということだろう。今は皆ローエングラム伯に対し何処か不安を持っているからね」
「……」
「それともう一つは、私を宇宙艦隊司令長官から追い出したいんだ」
「追い出したい?」
「分艦隊司令官達の間で出たそうだよ、私には統帥本部総長のほうが合っているんじゃないかとね」
「どういうことだ」
「私を殺す事に失敗した場合、内乱終結後は統帥本部総長に昇進させようというのさ。司令長官には当然ローエングラム伯がなる。軍の実戦兵力を掌握しようという事だろう」
軍の実戦兵力を掌握する。それが狙いか、いやそこから全てが始まる、そう考えているということか。
エーリッヒを統帥本部総長にというのはおかしな話ではない。帝国軍三長官の中で統帥本部総長は軍令の最高責任者だ。エーリッヒなら十分にこなせるだろう。いや、むしろ適任といっていい。
「しかし、宇宙艦隊司令長官になったからといって、艦隊司令官達がローエングラム伯
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