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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百五十七話 呪縛
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すか?」

彼方此方で相槌が打たれた。少将が言った事はハイネセンでも話題になっている事だ。十月十五日の勅令発布後、帝国で内乱が起きるのは必至となった。同盟としては本来であればそれに乗じて帝国の壊滅を目論むのが最善の策だ。

しかし残念だが今の同盟にはそれだけの戦力が無い。いや、それだけの戦力が無いからこそ帝国は国内問題の解決を決意したといえる。シャンタウ星域の敗戦は同盟軍から帝国への侵攻能力を奪い去ってしまった。

同盟軍は時間を必要としている。軍を再建し、精強ならしめるだけの時間を必要としている。そのために内乱を長引かせるために出兵するという案が勅令発布以降、ハイネセンで軍だけではなく市民の間でも熱心に話されているのだ。

それ自体はきわめて妥当な発想でもある。そして同盟軍が出兵するとすればその役は我々第十三艦隊に与えられるだろう。だが、ヤンは艦隊をイゼルローン要塞に急がせてはいない。そしてその事は艦隊主要メンバーも分かっている。皆不審に思っているのだ……。

「貴官らも有る程度気付いているとは思うが、今回帝国で起きる内乱において同盟が軍事介入する事は無い」
「……」

微かに頷く姿、訝しげに眉を寄せる姿が見える。状況は把握していても納得はしていない、そんなところだろうか。俺自身納得しているとは言い難い。

「同盟と帝国は内乱終結後、両国が抱える捕虜を交換することで合意が出来ている」
ヤンの言葉に会議室がざわめいた。彼方此方で“捕虜交換”という言葉が囁かれる。

「なるほど、兵力不足に悩む軍としては捕虜交換は望む所だろう。レベロ財政委員長も何の役にも立たない扶養家族が減ってくれれば財政再建の面から見ても有難いとは思うのは間違いない。しかし、信じられるのか?」

キャゼルヌ先輩の言葉に皆が頷く。それを見てヤンが口を開いた。
「信じていいでしょう。これは秘密裏に行なうわけではありません。内乱発生後、両国が捕虜交換について共同声明を発表する事になっています。帝国が声明を反故にすれば自ら自分達が信用できないと表明するようなものです」
「……」

「それに帝国側にも捕虜を交換するメリットがある。内乱終了後、軍の再編が必要になるのは帝国も同様です。新兵を使うよりは多少なりとも軍務の経験のある捕虜を補充したほうが兵の練成は早く済む」
「なるほど」

パトリチェフ准将が太い声で相槌を打つ。その声につられるかのように何人かが頷いた。その姿を見てヤンがさらに言葉を続けた。

「この話を持ってきたのは国務尚書リヒテンラーデ侯、宇宙艦隊司令長官ヴァレンシュタイン元帥だ」
ヴァレンシュタイン元帥、その言葉に会議室のメンバーがそれぞれの表情で顔を見合わせる。そしてそれに気付いてはいないかのようにヤンの落ち着いた声がゆっくりと
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