第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#16
DARK BLUE MOON[ 〜Scar Faith〜
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心を灼かれ、泣き叫ぶ女を見て 『ただ愉しんでいる』
紅世の徒に、形容し難い嫌悪と義憤が湧いた。
「“銀” って、オレ達ァ呼んでる。アノ時ほんの少し垣間見ただけで、
一体どこのどんな “徒” なのかその名前すらも解らねぇ。
それから数え切れない程の徒も王もブッ殺してきたが、
その存在の切れっ端すら浮かんでこねぇんだ」
「では……今も……どこかで……」
躰を包む怖気と共に、花京院は鋭い視線でマルコシアスを見る。
「高笑いしてやがんのかもな。マージョリーの “疵” を肴にしてよ」
「……」
想わずテーブルを叩きそうになったが、
自分が憤っても何もならないので花京院は抑える。
「何故、ボクにそんなコトを教えたんですか?」
(不可抗力とはいえ) 訊いたのは自分だったが、
心中に走った衝撃の為にそのコトは忘れていた。
「さぁ〜て、何でかねぇ〜。ただ何となく、
『オメーには話しといた方が良いんじゃねぇか』 って想ったんだよ。
理由なんぞ知らねー。考えンのもメンドクセー」
ぞんざいにそう返す 『本』 に、誰かに似てるなと花京院はフ、と微笑を漏らす。
「ただ、今日のアイツ、マジに喜んでた。
いつもは部屋で一人静かに飲んで、オレとも二言三言話すだけなのによ。
あんなガキみてーに笑って、バカみてーにはしゃいで。
そーゆー事ァ、紅世の徒のオレにゃあしてやれねーからよ」
「……」
いつもあんなカンジではないのか、少々意外そうな表情でベッドの上の美女を見た
花京院は、やがておもむろに立ち上がる。
「そろそろ、お暇します。さようなら、マルコシアス。また明日、ですね」
まだ完全に酔いが抜けたわけではないが、さっきよりは大分マシになったので
ドアの方へと向ける足を、マルコシアスの無粋な声が制した。
「おいおいおいおい、“イイのかよ?”
男と女がメシ食って酒飲んだら後ァヤるコト決まって」
「次に 『そういう事』 を言ったら、 “エメラルド・スプラッシュ” を
撃ち込ませて戴きます。どうか忘れないでくださいね」
細い腕を腰の位置で組んで軽快に振り返った美男子は、澄んだ声でサラリと告げる。
一抹の嫌味もない爽やかな笑顔が、何故か一層の凄味を視る者に感じさせた。
そし、て。
「おやすみなさい。ミス・マージョリー。良い夢を……」
ドアの手前からベッドの上の美女にそう告げた花京院は、
音を立てないよう静かにその部屋を後にした。
扉が閉まる刹那、美女の口唇が寝息と共に微かに動き、誰かの名前を口にした。
←To Be Continued……
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