第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#16
DARK BLUE MOON[ 〜Scar Faith〜
[1/12]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
【1】
「消え、た……!?」
大形な龍を模したオブジェが見下ろす美術館前で
花京院と合流したマージョリーは、
告げられた報告に困惑の表情を隠さず問い返す。
館内はもう閉館時間の為、至る所の照明が落とされている。
前衛的なデザインの街灯が淡く照らすエントランスで、
暗闇と静寂の中を流れる夜風がそっと互いの髪を揺らした。
「ええ、突然 『写真の中の』 姿も地図の印も」
そう言って花京院は、ジョセフの 『念写』 した写真を美女に手渡す。
「……」
その中に確かに映っていた筈の忌むべき徒も、
右斜め位置に記載されていた地図もミエナイピンセットで取り去ったかのように、
今はきれいさっぱり掻き消えていた。
「オメーが探してる間に、どっかから逃げちまったんじゃねーのか?」
「在り得ません。ボクのスタンド 『法 皇 の 緑』を美術館内に潜行させ、
地下やスタッフルームに至るまで隈無く徹底的に探し尽くしました。
ソレに前以て細く延ばしたハイエロファントの触手を “結界” にして、
この敷地内に張り巡らせて於いたので件の人物が掛かれば認識出来た筈です」
他に一つ、妙に気にかかったコトと言えばスタッフルームのソファーの上で、
紫色の髪を携えた幻想的な雰囲気の美少女が仔猫のように眠っていたコトだが、
まぁコレは関係ないだろう。
「もう、この街からは、逃げてしまったんでしょうか……」
無言の美女に対し遺憾な表情で、花京院は呟く。
もしそうだとするなら、完全に自分のミスだ。
万全の態勢で監視を行っていたとは言え、相手が自分の想像だにし得ない
『能力』 を遣って逃走を試みた可能性は否定出来ない。
ソレならばその責任は自分に在ると翡翠の美男子が歯噛みする中、
「ま、ソレは無いわね」
写真を胸ポケットにしまった眼前の美女が、端然と両腕を腰の位置で組みながら告げた。
「“結界” なら、もう既にこの私が張って在るのよ。
此処に来てすぐ、この街半径数キロ以内をグルリと囲むようにね。
まぁ、簡単な封絶の応用ってトコ。
ソレには “ヤツの存在のみに反応する”特殊な自在法が編み込んである。
他の徒は素通りできる故にその効力は絶大よ。
だからヤツがこの私に気づかれず「領域」を突破するコトはまず不可能。
間違いなく、ヤツはまだこの街のどこかにいるわ」
流石に同じ 「標的」 をずっと追跡してきた歴戦の巧者。
その事前事後に対する工作は万全のようだ。
「そうですか。では、次はどうします?」
マージョリーがそう言うのなら、その事柄に異論の無い花京院は再び問い返す。
「アンタ、見掛けによらずタフねぇ」
中性的な外見とは裏腹に、大の男でも音を上げるような
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ