22部分:第二十二首
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第二十二首
第二十二首 文屋康秀
秋の山は美しい。しかしそれと共に荒々しい。
風が吹きすさび草木が揺れて唸り声をあげる。それは実に凄まじい唸り声であった。
そんな中にいてもついつい言葉を感じるのはどうしてか。今もそれでこの荒々しい山風を荒らし、即ち嵐と思い嵐が吹き荒れるこの山を嵐山という。そう思えてきた。
そして木ノ火と書いて色づく秋だとも思う。二つの気持ちが吹き荒ぶ嵐の中で揺れ動いているのだった。
木が古くなって朽ちていってそうして枯れていく。その感じを漢字と書くのかとさえ思う。ただ秋の山にいるだけだというのに言葉は次々と思い浮かんでそれが消えはしない。何時までも残ってしまうかのようだった。
その消えない言葉が集まりやがて一つになり。そうして出て来たものはというと歌だった。今日は歌を詠うつもりはなかったけれどついついそれを詠ってしまうのだった。
吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ
嵐の中で静かにこう詠った。詠ったその傍からまた風が吹き荒れて。寒々としているどころか全てを凍りつかせそのうえで吹き飛ばしてしまいそうだ。
その荒々しい嵐の中で詠った歌だけは吹き飛ばされも揺れ動きもしないのだった。ただそこにあって静かに山ではなく人の心に残るのだった。
第二十二首 完
2008・12・20
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