十四話:海水浴2
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どういうことですか?」
『自分の好きな人が危ない目にあったら、そんな目に合わせた存在に怒らない?』
「……すいません。よく分かりません」
だが、彼女は人を憎まない。人に対して怒りを抱かない。
彼女が怒るのは罪としての行為であり、誰かのためだけに怒りを抱くことはない。
罪を恨み、人を憎まずという高潔な精神性を持つ。
美しい生き様だ。普通の人間にはできないからこそ美しい。
星を見上げるのが好きな人間は多い。だが、星を追い続けることのできる人間はいない。
『そっか。なら、仕方ないか』
「え?」
しかしながら、彼はそれを否定しない。
そこが彼女の良いところだと知っているからだ。
彼女の全てに惚れ込んだ。ならば、何があっても追い続けるしかない。
『ジャンヌは今のままでもいいってこと』
「はぁ、そうですか。……あれ?」
『どうしたの?』
「い、いえ、なんでもありません」
そんな彼の決意はジャンヌには分からなかったが一つだけ分かることがあった。
彼は黒髭とオリオンに怒っている。そして話の流れからして、それは好きな人のため。
つまり、どういう意味でかは分からないが彼は―――自分のことが好きだということだ。
それに気づくと同時に、急に気恥ずかしくなってしまい鼓動が少し早まる。
『ほら、早くジュースを買ってみんなのとこに戻ろう』
「はい……あの、その手は」
『いや、人が多いから逸れるといけないし……』
差し出された手に顔を赤らめ戸惑うジャンヌ。
ぐだ男の方も理由付けはしてあるがやはり恥ずかしいのか頬を掻きながら目を逸らす。
しばらく、無言の状態が続いていたがやがてどちらからともなく笑いが零れる。
「では、エスコートお願いします」
『お任せあれ』
少女のやわらかい掌と少年の分厚い掌が重ね合わされる。
どちらもおっかなびっくりで力強くは握れない。
しかし、そのことがお互いのほんのり暖かい体温を深く感じさせ、意識させる。
それでも、しっかりと離すことなく二人は手を握り続けるのだった。
『ねえ、ジャンヌ』
「はい、なんでしょうか」
『今度―――二人きりで出かけない?』
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