第二十話 軋轢
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横須賀鎮守府会議室――。
「貴様ぁぁぁぁッ!!!!!」
重いものが倒れる凄まじい音と共に怒声が会議室に響き渡った。倒れたパイプ椅子を尾張の足が蹴り飛ばし、甲高い金属音が響いた。周りの艦娘は総立ちになったが、その場から動かなかった。正確には武蔵の吹き出す怒気と殺気に当てられて身動きできなかったと言っていいかもしれない。
「もう一度言ってみろ!!今なんて言った?!もう一度言ってみろ!!」
胸倉をつかまれた尾張は宙に半分浮き上がりながらも冷たい目で武蔵をにらみつけた。
「何度だっていうわよ。無能なあんたたちのおかげで、もう少しで作戦はしくじるところだったって。私があの深海棲艦を背後から攻撃しなければ、犠牲はもっと増えたわ。それは誇張でもなんでもない事実よ。」
「事実だと?貴様一人で戦争に勝った気でいるつもりか?勝手に戦列を離れおって!!何様のつもりだ!?軍律違反だぞ!!」
「ハッ!軍律違反ですって?」
尾張が馬鹿にしたように笑った。
「じゃあ、あなたたちは何をしていたのよ?前線部隊に汚い敵の掃除を任せて、自分たちは後方で悠々としていたじゃない。あなたたちに比べたら、まだ水雷戦隊や重巡戦隊の方が使い勝手があるわ。彼女たちは自分たちの役割をよく承知しているもの。」
「・・・・・・・。」
「それに比べて、あなたたち超弩級戦艦は図体ばかりでかい能無しだわ。艦隊決戦にこだわっているんだかどうだか知らないけれど、自分の身は後生大事。前線から遠く離れた後方で指揮を飛ばすばかり。」
「そんなことは――。」
「ないとは言わせないわよ。事実そうなんだから。今回の戦いだって、金剛型がボロボロになるまで戦ったのと対照的じゃない。」
「我々も沖ノ島棲姫との戦いで負傷したぞ!!」
「ノコノコと考えなしに至近距離にまで近づけば、それはそうなるでしょう。バカじゃないの!?私の言っているのはね、そんなことじゃないの。金剛をみなさいよ。自分が盾になって味方を逃して、最後まで戦ったわ。金剛型の性能については老朽艦で使えない戦艦そのものだけれど、私は少なくともあの行動は評価するわ。どっかのバカと違ってね!」
「お、お前・・・・!!」
武蔵がわなわなと全身を震わせていた。大和や陸奥、そして長門は何とか二人を分けようとしていたが、武蔵の鋼鉄の万力のごとき力で締め上げている手は容易に緩まない。
「それが気に障った?だとしたらあなたは救いようのないバカだわ。自分が気に入らないことを突きつけられるとすぐにカッとなるところは、前世とやらの大日本帝国海軍の頑迷で無能な軍人そっくりじゃない。」
「何!?」
ギリギリと尾張のスカーフごと締め上げた武蔵の眼には殺気が宿っていた。尾張は苦しそうに顔をひきつらせたが、その眼は武蔵から離れなかった。
「やめなさい!!」
顔色
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