第二十話 軋轢
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のよ。あれではまだまだ低レベルだわ。そんなんだから先の前哨戦でも余計な苦戦や犠牲を出してしまうのよ。」
尾張は皆をにらみつけた。
「一人も轟沈しなかった?高速修復剤があってよかった?バカじゃないの!?じゃあ聞くけれど、今回の作戦で何十機航空機が散ったと思っているのよ?!何人の妖精が犠牲になったと思っているわけ!?」
「それは・・・・。」
紀伊だけではなかった。皆が言葉を失っていた。触れられたくもない傷口を押されたようだった。
「艦娘と違って、妖精は沢山いるし、ティッシュペーパーみたいに使い捨てだからいいと?一人も轟沈しなかったからそのお祝いでお茶会?そして今夜は酒保を開けようと?信じらんないわ。どっちが『ふっざけるな!!』なんだかわからない。」
尾張が憎しみを通り越して凍てつくような眼で全員を見た。
「序盤でこれだけ苦戦して犠牲を出しながら、勝利という結果と言葉に目がくらんでいるあなたたちがバカすぎて嫌になってきた!!気心の合った同士が演習なんかするから、ああいう結果になるんだわ!!」
紀伊を押しのけるようにして尾張は飛び出して行ってしまった。
「・・・・・・・・・・・。」
皆が一様に重い空気を纏って、誰一人口を利かなかった。
「高雄さん・・・・麻耶さん・・・・・申し訳ありませんでした。」
紀伊が深々と頭を下げた。だが、答えは返ってこなかった。頭を上げると、麻耶が冷たい目でこちらを見ていた。麻耶だけではない。高雄も同じ目をしていた。
「重巡が中途半端か。そうかもしんねえな。あんたたち戦艦や空母戦艦から見れば・・・・。」
「待ってください!そんなこと――。」
「口には出さねえだろ?でも心の中では思ってることなんじゃねえのか?誰も彼も。」
「そんなこと、ありません!」
榛名が激しく否定したが、二人とも一様に冷たい目を消さなかった。
「もういいです。行きましょう。麻耶。」
二人は紀伊をすり抜けるようにして間宮を出ていった。
「くっ・・・・・!」
紀伊は思わずこぶしをぎゅっと握りしめていた。痛いほど爪が皮膚に食い込んでいる。それでも胸の中に渦巻く火を消すことはできなかった。
「これはまずいことになったわ・・・・。」
間宮の建物の陰からこの様子をうかがっていた赤城が顔色を変えた。練習場から戻り、尾張と言葉を交わした後、自室に戻ってから間宮に足を向けていたのだ。
普段戦いが終われば加賀と間宮に行くことが赤城の日課だった。だが、加賀と仲たがいしてしまった今、一緒に行くこともできず、紀伊のところにも足を向けたが不在だったため、仕方なく一人でいこうとしていた矢先だったのだ。
「ねぇ、加賀さ・・・・あぁ・・・・。」
振り向いた先には誰もいなかった。
「私は加賀さんと仲たがいしていたのだったわ・・・。」
はぁと赤城はやるせな
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