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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第二十話 軋轢
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「ねじくれた・・・・。」
今の言葉がカンに障ったらしく、尾張が赤城をにらみつけた。
「そう!そんなに聞きたいのなら、教えて上げるわよ!!」
一息すっと息を吸った尾張は大声を上げ始めていた。今の今までたまっていた鬱憤を赤城に叩き付けようと言わんばかりに。
「あなたはいいわよね!!何か意見を言えば皆がそれを素直に聞くんだから。どうしてだと思う?それはね、あんたが前世で精鋭中の精鋭って謳われた第一航空戦隊の双璧の一人だからよ!!」
赤城の顔が引きつった。
「でも、私たち紀伊型には何もない・・・・。だからこそ何を言っても軽んじられるし、今までだってそうだった!!私が最初からこんな言動をしていたとでも思っているの!?私のことを何も知らないくせに、偉そうに言うんじゃないわよ・・・・!!」
声がかすれていた。
「おかしいでしょう!!前世が何よ?!前の功績がなんだっていうの!?今は今でしょう!?関係ないじゃない!!いいわよ、やっかみだって言われても!!そうだもの!!!私は悔しいし、ひがんでいるし、嫉妬しているわよ!!でも・・・あんたたちだって同じよ・・・・。そんなものにしがみついて、食い下がって!ぶらさがって!!それで何になるというの!?技量も知恵も指揮能力も伴わない名ばかりの艦娘なんて、一番最低な存在よ!!役立たずだわ!!」
尾張は一気にほとばしるように叫んでから、不意に顔をそむけた。
「尾張さん・・・・・。」
奔流のようにほとばしってくる尾張の言葉を受け止めながら、赤城は徐々にある気持ちがあふれ出してくるのを感じていた。


尾張が可哀想だ。そして艦娘たちみんなが可哀想だ、と。――。


前世から転生した自分たちは前世に縛られ苦しんでいる。そして、前世を持たない紀伊、そして尾張たちは寄る辺ない自分たちの境遇に怯え、あるいはいらだっている。

前世があったら――。
前世なんかなかったら――。

お互いないものねだりをしているのかもしれない。しかし、どちらの側に立っても、今の自分たちを形作っている境遇が自分たちを苦しめている。このことは確かだった。
だからといって、と赤城は思う。紀伊にも言われたように、そして自分も自覚し始めたように、今の境遇を疎ましい、苦しいと思い続けるようでは何も変わらないのだ。その境遇を受け入れ、それをバネにして未来に向かって道を切り開こうともがき続けなくては、自分たちは何も変われないのだ・・・・。
「そう、変わらなくては。変わるように努力しなくては駄目なのです。尾張さん。」
ようやく考えをまとめ上げた赤城がそう言った時には、尾張は廊下に銀髪をなびかせながら足早に歩き去っていくところだった。その背中はしゃんとしていたけれど、赤城の眼には悲しみが一杯に漂っているように見えた。



間宮に向かっ
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