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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第二十話 軋轢
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なかったし、艦隊決戦の主力は戦艦だって、戦艦の数で勝敗の帰趨が決まるって、そう考えられていた時代だったわ。でもね、私たちの作戦参謀や東郷閣下はそうは思っていらっしゃらなかった。それが証拠に戦場では装甲巡洋艦も戦艦に負けないくらい活躍したし、残敵相当や水雷戦には駆逐艦の存在が欠かせなかった。黄海海戦での敵艦隊への接触やバルチック艦隊を誘導するのには巡洋艦の存在が不可欠だった。誰が欠けても乗り切れなかったのよ。日露戦争のあの大海戦はね。」
葵は深い吐息を吐いた。
「私は今でもそう思っているわ。そしてその考えは時を超えた今この時であっても生き続けていると思う。それは、私の目の前に立つあなたたちが栄光ある大日本帝国海軍の戦闘艦の生まれ変わりだからよ。東郷司令長官たちの血が脈々とあなたたち一人一人の中にしっかりと流れていると感じるからよ。」
「・・・・・・・。」
「誰一人かけても海戦を戦うことはできないわ。いろいろ言って悪かったけれど、もう一度尾張や私の言った言葉をよく考えてみてほしいの。尾張には私からよく言って聞かせるから。あの子のことは悪く思わないで。あの子もあの子なりに必死なのよ。どうにか理解してもらおうとしてね。ただ、自分の性能を誇示して他の艦をさげすむところは許せないけれどね。」
もう言うべきことは言ってしまったというように最後にほっと息を吐くと、葵は会議室を出ていった。呆然とする長門たちを残して。



会議室から出てきた尾張は苦しそうにせき込んだ。まだ武蔵の手が自分の喉首を締め上げてきている気がしてならない。
「あの、バカ戦艦・・・・!!」
尾張はこぶしに爪を食い込ませながら足早にその場を離れた。
「絶対に許さない・・・・!!全然わかっていないんだから・・・・!!」
頭に血が上りながら廊下を曲がりかけた時誰かに呼び止められた。
「尾張さん。」
尾張が振り向くと、赤城が立っていた。鋭い視線を向けていた。練習場からの帰りと見えて、手には弓を携えている。どうやら通りがかりに今の騒ぎを聞いてしまい、そのまま会議室脇の廊下で待っていたようだった。
「あら、何か用かしら?第一航空戦隊の双璧の赤城さん。」
その言葉に赤城は顔をしかめたが、かすかに首を振って口を開いた。
「今の話、聞いていました。あなたの意見は正しいと思いますが、問題はその口ぶりです。艦隊指揮官をバカ呼ばわりするのは、慎まれた方がよろしいと思います。」
「あなたもあいつらと同じ貉なわけね。沖ノ島攻略作戦の時に、私の意見をフォローしてくれたことは感謝するけれど、その考え方はいただけないわ。生半可な言葉じゃ相手は納得しないし、こっちの言葉を本気で取らないんだから!!」
「そんなことはありません!どうしてあなたはそうやってねじくれたものの見方しかできないんですか!?」

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