Side Story
少女怪盗と仮面の神父 27
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感謝ってのは信仰心と同じ。積み重ねた時間の中で自然に芽生えるものなの。要求するものでも、無理矢理生み出すものでもない。与える物に見返りを求めるなら、其処に愛は無いわ。貴女の認識の間違いはその辺りにある。私には、貴女の唱える感謝が懇願に聴こえてしょうがないのよ。「感謝を捧げるから傍に居させて」「役に立つから捨てないで、置いて行かないで」……ってね。あと私、こうも言ってた筈よ? 「心であれ物であれ、誰かと寄り添う事に対価を求めるのは間違いです。それは相手への信頼とは違う。挟んだものへの依存だ」って。ハウィスさんは貴女に感謝して欲しいとか、小指の爪先程度にも思ってない。なのに貴女は、感謝を対価に居場所の不変を願った。彼女への恩を返し続けていれば、その間は一緒に居られると信じた。……そうねぇ……。例えば、一週間家事を全部放棄して部屋でゴロゴロしてなさいって言われたら貴女、絶対落ち着かないでしょ? やらなきゃやらなきゃで、日に日に追い詰められるんじゃないかしら。だって、家事をしなきゃ感謝を示せないから。明日にでも追い出されると強迫観念が働いて、一週間後にはハウィスさんの顔もまともに見られなくなってると断言できるわ」
これにはミートリッテも「う……」と、たじろいだ。
シャムロックの間にもハウィスが気になってそわそわしていたくらいだ。一日・二日なら喜んで寝通すとしても、三日目・四日目には絶対、退屈を理由に何かしら手を付けたがっているだろう。
自分でも想像が容易いだけに、言い返せない。
「……私が、感謝に依存してる……?」
「そうよ。貴女に芽生えた感謝は本物だし、ハウィスさん達を大切にしたい気持ちも本物。けど、応え方が大きな間違いなの。ハウィスさん達を護りたいのなら、何があっても貴女自身を貶める遣り方を選んじゃ駄目。アルフィンさんに対する貴女がそうであるように、貴女が辛い時はハウィスさん達も辛いのよ。どうしても恩を返したい、でも方法が見付からないと言うなら、今はまだその時じゃないってコト。もどかしい気持ちは、自分自身を磨く原動力にしなさい。国王陛下すらも一目置いちゃう非の打ち所が無い淑女に成長してみせれば、それ自体が恩返しになるんだから。ね?」
男にウィンクされても気持ち悪い。と思うのに、アーレストがやると妙に様になるから不思議だ。
「……淑女とか、無理。私とは正反対だもん」
「努力もしない内に結論を出さないの! 頑張ってる人達に失礼でしょ! って言うか……残念だけど、貴女がこの先をどう生きるにせよ、多分一度は通らなきゃいけない道になったから。その点は潔く諦めてね?」
「……は? ……へっ!? 何!?」
神父がミートリッテの横……つまり崖先に立ち、向き合わせた彼女の体をギュッと抱き締めた。両手をばたつかせる彼女の抵抗を無視して、にっこ
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