Side Story
少女怪盗と仮面の神父 27
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め上げる。
「ふ、普通じゃなくて悪かったわね! いいじゃない! どうして劇話作家がみんな揃って崖に拘るのか、昔っから気になってたんだもん! 体験してみたかったんだもん!」
「だから、悪いとは思ってないし、莫迦にもしてないってば。そういう知的好奇心を持って行動するのは、別に恥じる事じゃないのよ。時と場合と安全性をきっちり選んでくれればね。……貴女、本当に誰も信じてないのねぇ」
「は……っ!? 崖ドボーンとみんなへの気持ちに、何の繋がりがあるって言うのよ!」
「崖の話だけじゃない。シャムロックに関しても、よ。誰からの愛情も信じてないから、簡単に自分を危険に曝せるんじゃない。貴女が傷付いたら、貴女を愛する人達がどれだけ嘆くと思ってるの? 死ななきゃ良いってもんじゃないのよ?」
「……!」
自身の腹を押さえていた両腕を解き、笑いを止めて、向き合ったミートリッテの額を指先で軽く突く。
「礼拝堂で微睡んでいた貴女は、私にこう言ったわ。「ハウィスが許してくれてる間は、ずっと一緒に居るから」って。許してくれてる間は……なんて言い方、おかしくないかしら? いつか捨てられる覚悟でもしてるみたい。ハウィスさんの愛情を信じているなら、こんな莫迦げた言葉は決して出てこないでしょうに」
「ばっ……」
反論しようとして、息が詰まる。
ハウィスの優しさで成り立っている生活……いつか終わりを告げられる日が来ると思っていたのは事実だ。
だからミートリッテは、ハウィスの家に与えられた部屋を「自室」とは言わない。
……どうしても、言えなかった。
「確かに、この世界には気分次第で生命を拾い棄てる傲慢で無責任な人間も吐き気がするほど多く存在するわ。狂った人間性に触れる機会があったのなら、隣人を疑ってしまう気持ちも解る。でも……ねぇ? ハウィスさんは、他人の貴女を此処まで真っ直ぐで可愛らしい、立派な人間に育てた人なのよ? なのに何故、彼女と共に過ごした時間を否定するような考え方をしているの?」
『彼女の愛情を、本当には信じてないからでしょう?』
音に表れなかったアーレストの言葉が、耳の奥で反響する。
「……シャムロックは……村のみんなに恩を返したくて……」
「そうね。感謝はしているのでしょうね。ただ、信じてないだけで」
「他に……方法なんて、なかった……!」
「……育ててやった義理に報いろとか、押し付けがましい台詞を言われたのかしら?」
「そんな訳ないでしょう!? 私が、勝手に!」
「なら、良いじゃない。今は何も返さなくたって」
「!?」
見上げた、月明かりが照らす神父の表情は平然としていて。
両手の甲を腰に当て、何を悩んでいるのやらと、涙目のミートリッテを鼻で笑った。
「あのね。前にも言ったと思うけど、
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