Side Story
少女怪盗と仮面の神父 27
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張りを出し抜いてバーデルを脱出したことといい、殺人行為に慣れたイオーネさんに堂々と噛み付いた時といい、どれだけ剛毅なのよ!」
怪盗の言動が(笑えるという意味で)いたくお気に召したらしい。
アーレストはぶるぶる震える身をよじらせ、指先で涙目を押さえた。
肩越しにミートリッテの顔を覗き。
また、ぶふぅっと噴き出す。
一方、爆笑されているせいで羞恥心を刺激されたミートリッテは、怪訝な表情から一転、くわわわわぁあっ! と、耳まで真っ赤に染め上げる。
「ふ、普通じゃなくて悪かったわね! いいじゃない、どうして劇話作家がみんな揃って崖落ちに拘るのか、昔からずっと気になってたんだもんっ! 体験してみたかったんだもん!」
「だから、悪いとは思ってないし、バカにしてるわけじゃないんだってば。そういう知的好奇心を持って行動するのは、別に恥じることじゃないのよ。時と場合と安全性をきっちり精査して選んでくれればね。……貴女、本当に誰も信じてないのねぇ」
「は……!? 『崖ドボーン』とみんなを信じてるか信じてないかに、どんな繋がりがあるっていうのよ!」
「崖の話だけじゃない。シャムロックに関してもよ。結局、貴女は誰からの愛情も信じてないから、そんなにも簡単に自分を危険に曝せるんじゃない。貴女が傷付いたら、貴女を愛する人がどれだけ嘆き悲しむと思ってるの? 死ななきゃ良いってもんじゃないのよ?」
「…………!」
自身の腹を押さえていたアーレストが両腕を解き、笑いをやめて。
向き合ったミートリッテの額を、指先で軽く突く。
「礼拝堂で寝惚けた貴女は、私にこんなことを言っていたわ。『ハウィスが許してくれてる間は、ずっと一緒に居るから』って。おかしくないかしら。許してくれてる間は……なんて言い方、まるで、いつかは必ず捨てられると確信しているみたい。本当に心からハウィスさんの愛情を信じているなら、こんなバカげた言葉は決して出てこないでしょうに」
「ばっ……」
反論しようとして、息が詰まる。
ハウィスの優しさで成り立ってる今の生活。
いつか終わりを告げられる日が来ると思っていたのは事実だ。
実の親子でも、時が来たら巣立つのが当然で。
そうではない自分には、巣立つ時を選ぶ資格など無いと。
だからこそ。
ミートリッテはハウィスの家に与えられた部屋を『自室』とは言わない。
……どうしても、言えなかった。
「確かに、この世界には気分次第で命を拾い棄てる傲慢で無責任な人間も、吐き気がするほど多く存在するわ。狂った倫理に触れる機会があったのなら隣人を疑ってしまう気持ちも解る。でも、ねえ? ハウィスさんは、他人の貴女を、ここまでまっすぐで可愛らしい、立派な人間に育てた人なのよ?
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