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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 27
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りー!」だと、血沸き肉踊るコテコテの男性向け戦争話になるわよね! けど……もしも終盤で主人公の虚しさが表に出て来たら、病み展開で恐怖話に転がる可能性もあるのか。その場合、最終的には崖に来てぼんやり空を眺めた後、ふらぁーっと落ちるのかしら? 幕が降りる時の効果音はザバーン! って白波の音でぇ……ふふふ……それもアリね」
 「…………もしもし?」
 「まぁ……どうなるにせよ、そもそも舞台劇を観賞するだけの金銭的余裕が無いから、私自身が「崖ドボーン」できればそれで良いんだけどね!」
 「………………………………」
 「あ、でも。此処からじゃ、下の河がよっぽど深くないと飛び込めないかなぁ……。峰が目線の高さよりちょっと上程度に見えてるんだもの、西の崖より確実に高いだろうし。河幅は広く見えるけど、実は渓流で岩だらけの浅底だったとか、水中に上向きの太い枝が落ちてるとか、落下中に風の影響を受けて河岸まで運ばれたら……酷い惨劇になっちゃう。村の近くで飛び降り自殺はしたくないな。うん」
 だとするとやっぱり、河を検分しなきゃ「崖ドボーン」はできないかぁ……と、ガックリ項垂れて立ち上がる。
 なかなか見当たらない希少な環境を前にして、西の崖と同様の展開。実に惜しい…… ……って!
 「何言ってんの、私! それどころじゃないのに!」
 如何ともしがたいと気付いて頭が冷えたのか、漸く背後に人の気配を感じ、ハッ! と其方に振り向いた。
 神父は暫く呆然と立ち尽くし、そして
 「…………………………ふ……っ……」
 クルッと背を向けて、腹を抱えた。
 「ふ……ふふ……っ……あっははははは!! も、駄目……! もう無理っ! なんなの、この娘! 崖ドボーンって! 崖ドボーンって! いろいろ可笑しすぎるわ! 何処からどう突っ込めば良いのか、全然判らない!」
 「な……っ!?」
 「……ああ、ごめんなさい。莫迦にしてるんじゃないのよ? だって普通、訳も分からず振り回されてる状況で崖に行き当たったら、まずは怯えたり、私を突き飛ばしてどうにか森の中へ逃げ出そうとするものじゃない? いえ、突き飛ばされはしたけど。でもまさか、崖から飛び降りたいとか! その割りに死ぬ気は無いって……こんな高さじゃ、飛び込む瞬間の姿勢次第では水面で骨が折れる可能性だってあるのに、無茶苦茶だわ。無謀すぎる。大体予想通りだったとはいえ、手練れの見張りを出し抜いてバーデルを脱出した事といい、人を殺すのに慣れたイオーネさんに堂々と噛み付いた時といい、どれだけ剛毅なのよ!」
 怪盗の言動が(笑えるという意味で)甚くお気に召したらしいアーレストは、ぶるぶる震える身を捩らせ、指先で涙目を押さえた。
 一方、爆笑されてしまった所為で羞恥心が刺激されたミートリッテは、くわわわわぁあっ! と、耳まで真っ赤に染
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