少年は加速するようです Round5
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スコールの着信が来る。
思わずそちらを振り向きそうになるのを堪えて応答のアイコンを押す。
『ハル、不味い事になってる。』
『は……?な、なんだよ、いきなり。』
『妙な噂が流れてるんだ。君が――』
いきなりの第一声になんとか思考音声で応えるも、そこで通信は切断され、同時に予鈴の
チャイムが鳴る。生徒間のリアルタイム通信が禁止されたのだ。
次にコール可能となるのは昼休みで、メールのやり取りは出来るが、学業に関係の無い物は
禁止されている。内容は気になるが、余程の事であるなら加速対戦を使う手だってある。それを
しないって事は、大した用事ではない筈だし、次の休み時間にでも聞けばいい。
と、全員が席に座って菅野を待つ静かな教室で考えていたが、始業を過ぎても担任が来ない事を
訝しんだ生徒達の間で小さなざわめきが起き、雑談に変じる少し前。
「お、遅れてすまない。日直、挨拶を。」
「はぁい、ちょっと待ってねぇ〜。」
何故かさっきより青い顔の菅野と一緒に入って来た愁磨君が自分の席へ向かう、その一瞬。
僕に向かって僅かに目を細めて見せたのを見逃さなかった。・・・やっべぇ、死んだかも。
菅野と相対した時とは比べ物にならない程の脂汗を流し、ほんわりした声に倣い、礼をした。
………
……
…
授業が終わった直後。タクにメールを送ろうと手を動かしかけた時に、ふと影が落ちて目を上げる。
すると僕の席の前に、背の高い男子が二人立ちはだかっており、反射的に身を固くする。
「有田、わりーけどちょっと付き合ってくれ。」
同い年とは思えない、大人びた造形の顔で教室のドアを差す。確か、石尾と言うバスケ部の
レギュラーだったはずだ。
気付けば、休み時間には騒がしくなる教室は静まり返っていたが、その静けさの中に驚きは
殆ど含まれていなかった。寧ろ、これが予期された事である納得さえあった。
状況が掴めず固まっている僕に向け、石尾は僅かに低くした声で続けた。
「こんな場所で、嫌な話なんかしたくねぇんだよ。お前だってそうだろ、有田。」
「……っ!」
それを聞いて、僕はまた遅ればせながら、状況を掴んだ。
つまり能美は菅野だけじゃなく、既に学校中に広まるように僕が盗撮未遂犯であると噂を流して
いた訳だ。ちらりと周りを見ると、こちらを見ない様にしながら、けれど冷ややかな目線を
向けるクラスメイト――の中、何かに耐える様に、両膝の上で拳を握りしめて俯くチユを見つける。
・・・この状況で、チユを苦しめているのは僕だ。せめて、毅然とした態度で立ち向かわないと、
ずっと、幼馴染に辛い思いをさせ
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