暁 〜小説投稿サイト〜
少年は旅行をするようです
少年は加速するようです Round5
[4/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
を開いて覗き込む。

部屋の奥の長い椅子には既に菅野が座っており、太い腕を見せつける様に胸の前で組んでいる。


「……失礼します。」

「来たか、入れ。」


若い日本史担当教師――体育担当と言われた方が余程納得できる――の第一声は決して友好的な

モノでは無く、回れ右したい気持ちを抑え、菅野の向かいの椅子の横まで行き、とある白いのから

受けた教訓通り、自分的最大限の礼と声量で挨拶する。


「おはようございます。」

「おっ……!」


すると、菅野は文句を言おうと声を上げかけるが、思い直したのか口を一度閉じ、僅かに顎を

しゃくりながら言う。・・・成程、意表をつくには凄く使えるみたいだ。


「お早う、そこに座れ。」

「……失礼します。」


むさくるしいのと向かい合うなんて御免なので立ってます――などと言える筈も無く椅子に座る。

数秒、正面から僕を眺めるとも睨むとも言える視線を向けて来たが、突然にやりと口角を上げる。


「有田。実はな、先生もこう見えて中高の頃は全然モテ無かった。」

「……は?」

「嘘じゃないぞ。何しろ柔道部だったからなぁ。彼女をとっかえひっかえしてるサッカー部の

奴等が羨ましくてなぁ。」


何を納得してか、うんうんと頷きながら突然始まった独白に唖然としながら、今の発言で

不適切な個所を脳内処理する。

まず自分がイケメンだって言ってるし、柔道部がモテないって決めつけてるし、サッカー部員が

遊び人だって決めつけてるし、最初に僕がモテないって決めつけてる。いやそれはあってるけど。


「だからな、有田くらいの年頃の男子が色々持て余してしまうのもよぉーく分かる。なぁ有田よ。

先生に何か言いたい事、言わなきゃいけない事があるなら、今ここで言ってくれないか?

約束する、先生は有田の味方だ。な、どうだ?」


ここで漸く、菅野が何故僕を呼び出したのかをうっすらと悟る。恐らくは能美が、自分の正体を

隠した上で、直情的な菅野にも分かる様に、昨日見つかったカメラとに因果関係があると思わせる

情報を伝えたのだ。しかし、そうと分かれば腹も括れる。


「あの、先生。」

「おおっ、なんだ?何でも言ってみろ!」

「その前にまず、この会話を録音させて貰います。」


マニュアルに書いてあった通りにそう言うと、菅野はぽかんと目を開いて、数秒後、これも

マニュアル通りに顔をみるみる内に赤変させた。数年前の新聞部は有能だなぁ・・・。


「なんだ、それはどういう意味だ有田!先生が信用出来ないとでも言うのか!?」

「いえ、先生を信用していないのではなく―――」



[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ