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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第四八話  かたわれどき
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「それにアイツには悪いが、(おれ)(おれ)の理を持って望むがままに動くのみだ。互いが思いあっていれば多少の食い違いはあれど結果は付いてくるものだ。」
「もしついてこなければ?」

「それはその程度の関係だったという事。いや、或いはそうなることが自然という事だったのだろう。
 何にしろ己を通した結果に後悔するなど、煮え切らない半端モノのすることだ。」

まるで、仕合に挑む剣客のような空気を纏った忠亮の言葉。この頑固さは筋金どころか鉄骨入りだと感心半分、あきれ半分の感想を抱く。

「……もう、覚悟は決めたって顔ね。野暮だったかしら?」
「男の覚悟に水を差すという意味では野暮というより無粋だろうな。」

「そうね。じゃあ、無粋ついでにインフォームド・コンセントと行きましょうか。」


少し砕けた様子が変わり、一人の医者としての顔が出てくる。

「今回の手術で行われるのは補助人工心肺、および右腕への義手アタッチメントのインプラント手術。
 すでに日本での貴方の疑似生体移植時点で土台となるチタンインプラントの埋め込み手術は終えているから、もうあなたの骨組織とチタンが完全結合しているはずよ。」

チタンは極めて生体適合性が高い素材だ。放っておけば骨組織がチタンを半ば取り込む形で結合して完全に骨格の一部となるのだ。
そして、通常の状態でさえ高い生体適合性を持つチタンだが、光学処理を施すことでその適合率は飛躍的に向上し、尚且つ老朽化という楔からも解き放たれる。
つまり、人体の生体と器物を繋ぐのに最適な素材と言えるのだ。

「そして、これが本命……補助人工心肺とその後の機能拡張デバイスとを統合コントロールするために脊髄に指向性たんぱく技術を流用した有機ナノマシンとマイクロチップから成る特殊インプラントを脊椎に埋め込むわ。」

之こそ本命、脊椎に埋め込んだマイクロチップを介し、戦術機のメインコンピュータと脳を接続する。
そして、同時にこのマイクロチップと補助人工心臓を接続し、失った神経節の代替えとする。

「おそらく、術後完全に定着するには最低でも半年―――そして、僅かでも有機ナノマシンの設計が間違っていれば良くて半身不随、最悪死ぬわ。」
「ここ一番の大勝負だな、(おれ)の命……あんたに預ける。」

不敵に笑い皮肉ると、直後に戦士としての貌で告げた。

「驚いたわね自力本願である貴方が他人に命を預けるなんて言い出すとは思わなかったわ。」
「あんたが医者(プロ)だからな。その矜持を信頼せずしてどうする、(おれ)も曲がりなりにも専門家(プロフェッショナル)だからな。」

軍医として本土奪還作戦に随伴し、満身創痍で運び込まれた彼を手術したころからの付き合い。
故に、彼の本性は割と見抜いていた―
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