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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第四八話  かたわれどき
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「成るほど俺も年を取るはずだな。―――今のお前ならばアイツも安心して眠れるだろう。」


少しお道化(どけ)て言う唯依。その柔和で春先の陽光を連想させる笑顔はとても魅力的だ。
彼女がこんな風に笑うのを知らなかった。
本当に、もう10・20若ければ口説いていただろう。だが、そんなトンビが油揚げを浚うような根性では本当のいい女は振り向くはずもない。

―――今回の事は自分を見つめなおす良い機会なのかもしれない。


「いや、お前の白無垢を見れんと悔しさのあまりおちおち寝てられんと化けて出るかもな。」
「それは困りますね。」

巌谷の前言を撤回する冗談に苦笑するのだった。





「…………」
「あら、黄昏ちゃってどうかしたのかしら?」

不意に声を掛けられ、自分のカルテを見ていた女史へと視線を動かす。
国連軍の軍服の上に纏った白衣、後頭部で髪を結ったポニーテイルなど色々特徴はあるが、それを差し置いても妙な色気が彼女を女医として見るのを拒否しているかのような雰囲気がある。

「何でもないさ香月先生。ただ、アイツはどうしてるだろうかと気になっただけだ。」
「それほどに想っているのに、こんな手術を受けようなんて――本当にいいの?」

静かに何かを見通すような目でベットにある(おれ)を見下ろしてくる香月モトコ。優秀な脳神経外科医であり、あの横浜の魔女香月夕呼の姉が。

「構わん、自分の女を自分の手で守る―――それが男の本懐だろう。戦う力を取り戻せるのなら文句はない。」
「幼稚ね、守るという行為が大好きでその行為に酔いたがる。それはそれで可愛いわね。けれど置物の様に扱われる女の人格は無視していない?
 それならばあなたは自分の矜持を守っているだけの小さい人間よ。」

「禅問答でもしたいのか?そのこと自体、俺は自然だと考えるがな。
 こと、戦闘に於いて女は男よりは強くは成れない。それは単純な生物学的事実。その実例に事欠かないのは言うに及ばんだろ。
 ならばそのような価値観が生まれたのは至極自然なことでしかあるまい。」

これは別に男尊女卑というわけではない。純然たる事実として男女の性差がそのまま能力傾向に反映されているだけの話なのだ。

例えば戦術機とて、女衛士が最近まで少なかったのは単純に成りたがる人間が少ないのに加えて、耐G性や空間認識力や方向感覚に性差が存在しているからに他ならない。
また戦術行動においても、女は直感的≒感情的であるのに対し男は推理的≒論理的に偏った傾向が存在する。

もっと言えば、女性衛士の徴用は所詮、男の衛士の減少と増大するBETAという驚異に対する数合わせに過ぎないのが本質だ。
BETA戦役が終わればその比率は徐々に是正されるだろうことは想像に難くない。
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