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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第四八話 かたわれどき
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ないだろう。
きっと、唯依が抱えている歪みに真正面から向き合い、諭していった存在がいるのは明々白々。
……親代わりを自負してはいても、自分は彼女を導いていなかった事に気づかされる。自分たちが碌にしてやれなかった事をたった半年程度で成し遂げてしまった存在への嫉妬が無いと言えば嘘になる。
しかし、そういう人間――――真実に、唯依という女の幸福だけを真摯に願った人間にしかそれは出来なかった事だろう。
自分にはそういう事が出来なかった。
(やれやれ……男としては完全に負けてるなこりゃ。)
唯依に成長を促した男に対して感嘆の念を抱く巌谷、正直に言えば唯依はかなりめんどくさい物件だ。
その立場故の制限に加え、彼女自身の気質も普通の人間であればかなりの負担になるのはわかりやす過ぎるほどに明瞭だ。
そんな人間に心底惚れこんだとしても、この娘の抱えていた歪みをこうも解消するのは一朝一夕ではない。
それを正確に見抜く観察眼に、それと真摯に向き合う姿勢を必要とする。そういった諸々を纏めて男の度量と呼ぶのなら彼女が良人に選んだ男の度量は自分を超えている。
「……手術は一か月後だったか?」
「はい……。」
「すまんな、恋路を邪魔する趣味はないんだが……」
申し訳なさそうな巌谷の言わんとする所は言葉にせずとも分かる、忠亮の手術が上手くいき完全復帰してもそのころ唯依はXFJ計画によってユーコンに居る。
すれ違ってしまう。
好きな人と長い間会えないのは正直言って寂しい。
だが、共に同じ未来を目指しているのだと知ってる。そしてその思いを抱き続ける限りいつか、それは叶うと信じている。
共に在ることが今は出来なくても、心は寄り添っているはずだ。
「中佐のせいじゃありません。これは私が決めた事なのですからどうかお気に病まないでください。
それに忠亮さんと私は例え今、別れていてもその先には共に笑って過ごせる未来があるはずだと信じていますから。」
「驚いたな、お前からそういう言葉を聞けるとはな。」
何処か力強さを感じる笑顔、それに本当に強くなったと感想を抱く。
ただ堪えるだけだった今までと違い、その先を見据えれるようになっている。希望を信じて、其処に全力を尽くせる強さ。
今までは張り詰めた糸のようだったのが、いつの間にかしなやかな弦の様になっている。
今回のXFJ計画は唯依の成長の機会となると考えていた、そしてそれは同時に幾ばくかの不安を抱える事でもあったが今の唯依にならば大船に乗った気分で任せられる。
「まったく、ついこの前まで子供だと思っていたのだがな………いつの間にか大きくなったな。」
「だって、もうすぐお嫁さんに成るんですから。何時までも子供じゃいられません。」
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