第n+6話 駅とスーパーと空に
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二会手 夏雄が目を覚ますと普通の病室のベッドだった。
「あら、おはよう夏雄君」
だが夏雄に最初に挨拶したのは、侍乃公他 美都子だった。
「……おはよう」
「どうしたの?押し相撲でフェイントかけられたみたいな顔してるわよ」
「よく分かんねぇ」
素直に真っ白な病室に美都子がいるだけなのに、夏雄にはそれがミスマッチに見えた。
「ここはかなり面白い所ね。すぐそこを出れると思うから、観光してみるといいわ」
そう言うと美都子は病室を去っていった。
それから漫画等を万能翻訳伊達コンタクトレンズを使って読んだりして時間を潰していると、看護師に呼び出され簡単な検査を受けた。
それを終えて病院を出た夏雄を迎えたのは、
日本の景色だった。
「……え?」
「あら、夏雄君、そろそろ帰ってこられるんじゃないかって思ってたのよ」
そして次に目についたのは美都子だった。
「あ、ああ。そうか」
美都子は日本人である。本人に聞いてはいないが、容姿も言語も日本のものだ。
なのに夏雄は、日本風の景色に美都子がいることに違和感を覚えずにはいられなかった。
「夏雄君、さっきから失礼なこと考えてない?」
「いや、そんなことはない」
「『こいつ一周回って東京スカイツリーのてっぺんで日常生活しねぇかなぁ』とか」
「思ってねぇよ」
「トムになればエースになるとは言うけど、さしもの私も文字通りの頂上生活なんてしたことないわよ」
「そりゃねぇよな」
「10000回ぐらいしか」
「無茶苦茶言ってんじゃねぇよ」
「それより、ここら辺ざっと歩いてみない?本当に面白いから」
「……面白いのか」
夏雄は渋い表情でふと振り返って自分が世話になった病院を見渡した。
そして絶句した。
「あら?思ったより面白かった?」
「ここは……」
そこの外観が、幼い頃夏雄が昔予防接種してもらった病院と一致していたのだ。
「日本じゃないわよ?」
美都子はにんまりしている。
「え、でも、」
夏雄が動揺していると、通りすがりの日本人2人組が会話していた。
「日本人じゃないわよ?」
美都子は空を眺めながら刺すように言った。
「……」
その2人の会話は、万能翻訳機を介して日本語で夏雄の耳に届いた。
「……」
平静を保とうと深呼吸する夏雄に、ダイレクトに差し伸べられた手があった。
「さ、観光しましょ!」
美都子は満面の笑みを見せた。
「…………」
ここは日本ではない。
「そろそろ切り替えついた?」
「……そうだな」
歩きながら、夏雄は頷いた。
「さぁさぁそれなら、本場の人間なんだから穴場とか教えてよ」
「穴場?」
「キャベツの安いスーパーとか知らない?」
「知
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