第5話
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まま賊の背後から襲いかかる。
まさか、自分達の背後からそんな者達が来るとは夢にも思っていなかった様だ。
抵抗する間もなく、討ち取られていく賊達。
焦って逃げようとしても前にも兵士達がいる。
既に統制が取れていないのか、完全にパニック状態になり生き残っている賊達は逃げる事に専念しはじめた。
その中でも逃げきれずに背中を向けた所で斬られ死んだ者もいたが……
暢介も久遠も追撃する気は無いので彼らを逃がした。
しかし、ここまで死ぬ思いをした賊が再び同じ場所を攻めてくるとは思えない。
賊行為を続けるにしても、ここ以外に移っての事だろう。
そしてそれは、暢介達の知る所では無い。
「暢介……」
「あぁ……」
勝利したはず、しかし、2人の表情は冴えない。
見渡すと賊の死体に混じって、兵士や住民の死体も転がっていた。
勝利はしたが、犠牲はやはり出てしまった。
勿論、犠牲者0なんていう戦場があるはずがない。
そんなのがあるとすればゲームの世界ぐらいだろう。
住民の死体を暢介は見る。
若い男性で、暢介と歳は変わらない様に見える。
もしかしたら、この男性の家族が町の中で待ってるかもしれない。
男性の奥さんや子供、あるいは両親が無事に戻ってくる事を……
しかし、彼は戻ってくる事は無い。
「家族への説明は、俺がしておくよ……久遠は、遺体を弔ってくれ」
「……うん」
そう言って暢介は町の中へ歩を進める。
久遠は兵士達に遺体を弔う様に告げ、自身もその準備に取り掛かった。
予想していた事とはいえ、この光景は辛いものがある。
そう、暢介は思う。
今回の戦闘で死んでしまった住民の家族に、その旨を告げる。
その場で泣き崩れる者、呆然とする者。
予想はしていたのだろう。
戦闘になれば死人が出る、それが自分の子供だったり旦那だったり……
しかし、現実でそういう事になると思考が止まってしまうのだろう。
中には暢介に殴りかかろうとし兵士に止められる者もいた。
もっといえば、あの時にソフト帽の女性が賊を殺さなければ。
その後、暢介達がここに来なければ死なずに済んだのではないかと思う者。
そういう者達がいる中で、生きて戻ってきた者達の表情は明るい。
そして、戻ってきてくれた者達の家族も喜んでいた。
今日の町は2つにはっきりと分かれるだろう。
賊を倒し、自分達の町を守れ、生きて戻って来れた事を祝う者。
町は守れたが、自分の命を落とし戻って来れず、その現実に沈む者に。
「そういえば、あの帽子の子。どうでした? 剣術の方は
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