100部分:第百首
[8]前話
第百首
第百首 順徳院
古い軒並はもう何もかもあの時の面影をなくしてしまって。
ただただ荒れ果てているばかり。そこに見るものは栄華ではなく。
かつては栄えていたものが荒れ果てるその姿。そして昔から受け継がれていたものが今遂に衰えようとしている。そのことだった。
それでもこう思わずにはいられない。どうしても思ってしまう。
この荒れてしまった庭にまた栄えが欲しい。もう一度美しい花を咲かせたい。そんな思っても仕方のないことを今思ってしまう。思いたくはないのに思ってしまう、これも因果なのかと考えてしまうがそれでも思ってしまうものだった。
どうにもならないことはわかっているけれどそれでも。この荒れ果ててしまった古い軒並を見ていると思わざるを得ない。この思っても仕方がない気持ちを胸に抱いていると歌が心に宿った。その歌がこれだ。
ももしきや 古き軒場の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり
今はもう昔のこと。思ってもせんないことではある。けれど思わずにはいられず今こうして歌に詠った。心に宿ったその歌を。
歌にしてみても消えはしないこの寂寥の気持ち。この気持ちを抱いたまま庭を眺め続ける。どうにもならないことではあってもそれでも。思わずにいられずそれが歌になって出た。栄華はもう昔のことだった。
第百首 完
2009・4・15
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ